コラム

アジアの核廃棄物はモンゴルへ?

2011年04月01日(金)17時15分
核のゴミ捨て場に?核のゴミ捨て場に? モンゴルに放射性廃棄物の貯蔵施設ができれば、
周辺アジア諸国の難題は解決するが Reuters


 アメリカはモンゴルとの間で国際的な放射性廃棄物の貯蔵施設設置について協議している、とアメリカの雑誌ナショナル・ジャーナルが伝えた。


 米国務省原子力エネルギー安全保安部のリチャード・ストラトフォード部長によると、米エネルギー省とモンゴル政府の協議は初期段階で、この計画を進めるかどうかはまだ決まっていない。

 2年に一度開かれるカーネギー国際核政策会議で講演したストラトフォードは、使用済み核燃料の貯蔵施設が中央アジアにできれば、原子力発電所の放射性廃棄物の処理に困っている台湾や韓国にとって朗報となる、と語った。

「モンゴルが受け入れ先になれば、国家の枠組みを超えた使用済み核燃料の貯蔵に弾みがつく」と、ストラトフォードは核協力に関するパネルディスカッションで語った。「台湾と韓国の核政策関係者は、使用済み核燃料の処理に困っている。私がずっと提唱してきたような国際的な貯蔵施設があれば、問題は解決する」

 ストラトフォードは、放射性物質の取引交渉でアメリカ政府を代表する特使だ(こうした国際条約は、米原子力法の該当条項の番号を取って「123合意」と呼ばれることもある)。

 アメリカは、台湾と韓国を含むアジアの貿易相手国にウラン燃料を提供している。モンゴルが元はアメリカ製の使用済み核燃料をこうした国々から受け入れるためには、アメリカがまずモンゴルと核関連物質の取引について合意しなければならない。


 プーチン首相は数年前、ロシアが同様な役割をすると提唱したことがある。しかしその提案は実現しなかった。もしモンゴルが放射性廃棄物を受け入れるなら、アジアの近隣諸国にとっては願ってもない話だ。アメリカと核関連物質の取引に関する合意が成立すれば、モンゴルの電力産業が発展するきっかけになるかもしれない。

 もちろん核拡散のリスクはある。そして日本の震災のことを考えれば、モンゴルが地震と無縁の土地ではないことも思い出さずにはいられない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年3月31日(木)02時56分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 01/04/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日鉄、純損益を600億円の赤字に下方修正 米市場不

ビジネス

ユニクロ、10月国内既存店売上高は前年比25.1%

ワールド

中国、対米関税を一部停止へ 米国産大豆は依然割高

ビジネス

午後3時のドルは153円半ば、株大幅安で一時円高
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story