コラム

ワシントン毛沢東シンポ報告――映し出した危機感と無防備

2016年09月26日(月)19時19分

 中国の覇権の危険性が及んでいるのは軍事や経済だけではない。

 一番怖いのは、むしろ「文化」という思想戦あるいは情報戦に関してだ。

 習近平政権になってから「七不講(チー・ブジャーン)」(七つの語ってはならないこと)という指令が出され(2013年5月)、その中に「党の歴史的過ち」に関して学校で教えてはならないというのがある。

 それに対して、中宣部(中共中央宣伝部)は、全世界に「中国共産党は正しい」という歴史観を植えつけるために、多くの学者を派遣している。

 筆者はシンポジウムが終わるとすぐに数多くの在米中文メディアからの取材を受けたが、その多くが9月8日に出演したBSフジ「プライムニュース」の朱建栄氏との「論争」を問題視していて、日本は日中戦争当時と同じく、今もなお中共の情報戦に、まんまと乗っかっているではないかと詰問された。

在米華人研究者や中文メディアに問題視されている朱建栄氏の発言

 なぜ「プライムニュース」における朱建栄氏の日本語による発言が、はるかアメリカで批判の対象となっているのか、こちらから質問したところ、以下のような回答が戻ってきた。

――日本にいる中国人研究者が「プライムニュース」を見ていたところ、朱建栄氏があまりにデタラメを言っていた。たとえば(中共スパイの)潘漢年は毛沢東の命令を受けて岩井公館に潜り込んでいたことは潘漢年の物語に興味を持っている者なら誰でも知っている事実なのに、朱建栄は「毛沢東の身分は高く、潘漢年はものすごく低い。この二人が直接接触を持つことなど絶対にありえない。(スパイ活動は)潘漢年独自の判断による行動だ」と言って遠藤を罵倒した。ここまでの無知をさらした中国人研究者を未だ見たことがなく、唖然とした。

 また『回想の上海』を他の日本人研究者が読んでいないと遠藤が思っているのは、他の研究者に対する冒涜だと朱建栄は言って、指を大きく振って遠藤を指しながら激しい批判の意志を表した。

 これはまるで、アインシュタインに「物理の研究者はみんな物理を知っているのに、なぜ、あなただけが相対論を発見したのか」と聞かれて、アインシュタインが「さあ、他の人には分からなかったのだろう」と回答した場合、「それは他の物理学者に対する冒涜だ」と罵倒するに等しく、滑稽でさえあるとメールで書いてきた。あまりに興味深かったので、日本語を中国語に訳してもらって、遠藤と朱建栄の論争を知るに至った。それは在米華人同士の間で、すぐに評判になった。

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

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