コラム

「宇宙で同期と待ち合わせ」が実現! その舞台「ISS」を知る7つのキーワード...日本の貢献、日本人宇宙飛行士の活躍

2025年08月08日(金)22時25分

ISS内には通常7人程度の宇宙飛行士が滞在していることが多いが、たとえば25年8月8日には到着直後の油井さんのグループや帰還直前の大西さんのグループなどで計11人と混み合っている。

中国は07年にISSへの参加を打診したがアメリカの反対によって叶わず、独自の宇宙ステーション「天宮」を建設して21年から運用している。また、インドは35年に独自の宇宙ステーションを建設する計画がある。


2.日本人宇宙飛行士のISS滞在記録は?

日本人のISS滞在時間は、4回長期滞在した若⽥光⼀さん(引退)が11583時間57分(482.7⽇)で1位。古川聡さん(滞在2回・現役)が8691時間46分(362.2⽇)、野⼝聡⼀さん(滞在3回・引退)が 8057時間56分(335.7⽇)と続く。

JAXA宇宙飛行士はこれまでに13人選ばれており、7人が現役だ。うち、ISSに滞在したことがあるのは上記の3人に加えて星出彰彦さん(現役)、⾦井宣茂さん(現役)、油井さん(現役)、⼤⻄さん(現役)、⼟井隆雄さん(引退)、⼭崎直⼦さん(引退)の計9名だ。

日本の宇宙開発黎明期に活躍した宇宙飛行士、毛利衛さん(引退)と向井千秋さん(引退)はスペースシャトルの搭乗経験はあるがISS滞在経験はない。23年2月に宇宙飛行士候補者選抜試験の合格者となり、24年10月に宇宙飛行士に認定された米田あゆさん(現役)と諏訪理さん(現役)は、宇宙飛行未経験だ。

また、民間人としてISSに滞在した日本人には、21年に12日間滞在した実業家の前澤友作さんと、前澤さんのアシスタントとして同行した平野陽三さんがいる。当時、自費の宇宙旅行者がISSに滞在するのは約10年ぶりで、CNNはその旅費を約100億円(2人分)と推測して報じた。

3.ISSへの日本の貢献1 「きぼう」日本実験棟

「きぼう」日本実験棟は、日本初の有人宇宙実験施設だ。スペースシャトルで3回に分けて打ち上げられ、07年より組み立てが始まりISSに取り付けられた。3回のミッションには土井さん、星出さん、若田さんの3名の日本人宇宙飛行士がそれぞれ関わり、日本人自らの手で組み立て、起動、検証が行われた。

ISSでは最大の実験棟で、地上とほぼ同じ空気組成で1気圧に保たれた「船内実験室」と、微小重力や高真空下で実験ができる「船外実験プラットフォーム」、「船内保管室」、実験・作業用の「ロボットアーム」で構成される。さらに、重量50キログラム程度までの人工衛星を軌道投入できる機能を有し、各国から受託して約360機(24年12月時点)の衛星を射出している。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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