コラム

地球に帰還した古川聡宇宙飛行士、「軌道上記者会見」で2度質問した筆者が感じたその人柄と情熱の矛先

2024年03月12日(火)22時20分

実際に、2回目となる軌道上記者会見で筆者が「古川さんは宇宙空間で身長が伸びたり、顔が丸くなったりしたという身体観察レポートをSNSでつぶさに発信しています。自身の体に起きた変化で一番意外だったことはなんですか。また、どうしてそれが起こったのか、古川さんのお考えがあれば教えてください」と尋ねると、「顔が丸くなったり...」の部分が聞こえた瞬間に、古川さんは頬に手を添えて丸いゼスチャーをして笑顔になりました。


「無重力環境では、地上の重力環境では、主に下半身に行っていた血液や組織液が上半身に移動する体液シフトが起こります。それによって、飛行前に比べて、宇宙飛行中の私の下半身が細くなります。下、すなわちふくらはぎが約2センチ程度、太ももが2、3センチ、ウエストが4、5センチ細くなって、それはその体液シフトで説明できます。

しかし、胸の周りの胸囲も増えてるんじゃないかと自分で予想してたんですが、それが減っていた。これが意外でした。私の理由の仮説としては、上半身、特に脳への血流、組織液そうしたものが増えたことによって、脳がこの血液、体液が過剰だと判断して、それを減らしたものと推測します。それによって、私の下半身においては、血液体液の減少プラス体液シフトによって細くなった。そして、胸囲においては、その血液、体液、組織液の減少によって、細くなったものではないかと考えています。

ちなみに、飛行前に比べて宇宙での体重が私自身3キロほど減っております。これは前回の飛行と同様です。これも血液、組織液の減少によるのが、その原因の一つではないかと推測しています」

古川さんの医師かつ宇宙医学の研究者としての見解は、とても興味深いものでした。ですが、筆者は「顔が丸く」の時に古川さんの笑顔を引き出せたことを、一番嬉しく思いました。

今後しばらく、古川さんはアメリカに留まり、メディカルチェック、リハビリを経て、数カ月後に帰国する見込みです。帰国後に予定されているミッション成果報告会で、古川さんの明るい笑顔を再度見られることを楽しみにしています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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