最新記事

事件

7年間かけて100万ユーロを金持ちの口座から引き出したイタリアの銀行員

2018年10月11日(木)15時30分
田中美貴(イタリア在住ライター)

7年も発覚しなかった…(写真はイメージです)Wicki58-iStock

<イタリアの小さな村の銀行員が高額預金者の口座から総額100万ユーロ以上を不正に引き出していたという事件が起きた。その目的は...>

「ロビン・フッド」に「鼠小僧次郎吉」と、悪者や金持ちから金品を盗んで貧しい人たちに分け与える人情にあふれる盗賊が登場する物語は古今東西に存在するが...。これはとあるイタリアの田舎町で起きた銀行員のお話。

大筋はこうだ。オーストリアやスロベニアとの国境近いイタリア、フリウリ=ヴェネチア・ジュリア州にフォルニ・ディ・ソプラという山岳地帯の人口1000人足らずの村がある。住人たちのほとんどがお互いを見知っているような小さな村だ。

その村にあるクレディト・コペラティーヴォ・ディ・カルニア・エ・ジェモネーゼ銀行(Banca di Carnia Gemonese del Credito Cooperativo)の支店で、ディレクター職にあったジルベルト・バスキエラ(50歳)が、7年間に渡って総額100万ユーロ(約1憶3000万円)余りを高額預金者の口座から引き出していたことが発覚した。

バスキエラは複数の口座から数回に分けて少しずつ引き出した金を、経済的に困っている人たちに流していたという。発覚の後、バスキエラは同行から即刻解雇され、横領と詐欺の罪で訴えられ、自宅は差し押さえられた。

地方の小さな村の話ではあるが、このニュースはコリエレ・デラ・セラ、レプッブリカ、ラ・スタンパ等の大手紙からイル・ガゼッティーノのウーディネ版など地元紙、ファンページをはじめとするニュースサイトまで様々なメディアで取り上げられた。

現代のロビン・フッドなのか?

コリエレ・デラ・セラ紙やイル・ジョルナーレ紙によると、バスキエラは「経済的に困窮している人、銀行からの借用が受けられない人たちを助けるためにやった」とし、「我々銀行の使命はお客様の貯蓄を守るだけではなく、お金が必要な人たちを支援することだと考えている」と語っているそうだ。

昨今のイタリアの不況の中、バスキエラとしては、受給額の少ない年金生活者や、十分な補助を受けられない若者などを助けるため、自分なりの反乱を起こしたということのようだ。高額預金者から引き出したお金は、自分のためには一切使っていないとしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    ホルモンを整える「ヘルシーな食べ物」とは?...専門…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:非婚化する世界

特集:非婚化する世界

2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?