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革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」

LACK OF LEGITIMACY

2026年4月10日(金)18時00分
モハマド・セルーン (ドーハ大学院研究所助教)
Morteza Nikoubazl via Reuters Connect

Morteza Nikoubazl via Reuters Connect

<かつて革命によって王政を倒した国が世襲を選択、この矛盾はイランをやがて緩やかな崩壊へと導く>


▼目次
公の場に一度も姿を見せず
政治的神話の崩壊は修復不能

イランの最高指導者モジタバ・ハメネイがその地位に選出されたのは、父であり前最高指導者のアリ・ハメネイが自宅を爆撃され、殺害されてからわずか8日後のことだった。これはイランの現体制が引き続き強靭である証拠だといわれてきた。

だが、この見方は間違いだ。

現在のイランは、1979年の革命で王政を倒したことにより誕生した共和政の国だ。それなのに最高指導者を血筋によって選ぶのは、革命の理念と大きく矛盾する行為であり、アメリカやイスラエルの爆弾よりも長期にわたり国家の根幹にダメージを与える恐れがある。

革命後に成立したイラン憲法は、最高指導者の選出方法を明確に定めている。選出に当たるのはイスラム法学者からなる専門家会議で、イスラム法の学識と強い信仰心、政治的判断能力、そして行政能力が評価ポイントになるという。

革命を指導したルホラ・ホメイニの後継者として、89年に第2代最高指導者に選出されたアリは、息子が第3代最高指導者になることに反対していたとされる。そんなことをすれば、かつて自分たちが否定した権力の世襲を認めてしまうことになる。イスラム共和政の国は、戦争の惨禍を乗り越えることはできても、国家の根幹に関わる矛盾は乗り越えられないかもしれない──。

そもそもモジタバの選出は、憲法が定める手順を踏んでいなかった可能性がある。複数の情報源によると、カギを握ったのはイラン革命防衛隊だったらしい。それが本当なら、新しい最高指導者選びで重視されたのは、革命が目指したイスラム法学者による統治よりも、安全保障の管理だったことになる。そして専門家会議は、武器を持った男たちの決定にお墨付きを与える存在になった。

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