最新記事
日米首脳会談

イラン情勢は、日本の「見えざる戦争」...高市・トランプ会談で、日本が直視すべき「9つの現実」

2026年3月19日(木)12時56分
IGSI(国際インテリジェンス戦略研究所)

現実的には日本は今より大胆に動く法的能力を持っている

率直に言えば、高市政権の「法的に極めて困難」という立場は、正確であり、戦略的であり、同時に卑怯でもある。憲法上の制約が実在するのは事実だし、その表現で時間を稼ぎ、交渉余地を広げるのも戦略だ。

しかし、3分の2の議席を持ち、公明党のブレーキもなく、過去には創造的解釈も積み重ねてきた日本には、いまより大胆に動く法的能力がある。それでも動かないのは、結局のところ政治的意思が欠けているからだ。そのギャップは、米政府、中国政府、イラン政府のすべてに見透かされている。

しかも国内には、対米不信という重い背景がある。2025年4月の朝日新聞調査では、有事の際に米国が日本を守ると信じる人はわずか15%だった。東京大学ROLESの2025年8月調査でも、米国の核の傘への信頼は39.3%まで低下している。日本が国益より同盟の論理を優先し、その見返りとして十分な安心も得られないと映るたび、この不信感は深まっていく。

結局のところ、高市・トランプ会談で問われるのは、役割分担の細部ではない。日本がこの危機を「原油高」として受け流すのか、それとも、自国のエネルギー安全保障、台湾抑止、外交仲介力、そして対米同盟の限界まで含んだ、より大きな戦略問題として受け止めるのか、その姿勢そのものが試されるのである。

何が起きそうか、というのは、ある意味では明白だ。どの選択肢にも大きな代償が伴う以上、この会談は日本にとって「勝ち目のない瞬間」として展開する公算が大きい。

だが、その中でも日本が何を断り、何を引き受け、何を提案するのかによって、この危機の意味は大きく変わる。イラン危機は中東の話では終わらない。それは、日本がどのような国としてこの時代を生きるのかを問う試金石になりつつある。


IGSI(国際インテリジェンス戦略研究所)

インテリジェンスとサイバーセキュリティを中心に国際情勢の分析やセキュリティ評価、脅威インテリジェンスなどを提供するシンクタンク。東京を拠点に国際的な情報機関やサイバー機関の関係者らの経験と知見を集結した分析を提供。
https://www.igsi-inc.com/

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米財務長官、イラン原油への制裁解除を示唆 供給増で

ワールド

欧州主要国と日本、ホルムズ海峡安全確保やエネルギー

ビジネス

ECB、26年インフレ率予測を2.6%に上方修正 

ビジネス

ECB金利据え置き、6会合連続 原油高で成長・物価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中