最新記事
言論の自由

中国政府に批判的な新聞の創業者に懲役20年...中国は正当性アピールするも国際社会大反発

2026年2月10日(火)10時25分
ジミー・ライ

ジミー・ライ氏。2021年2月、中国・香港で撮影。REUTERS/Tyrone Siu

香港の裁判所は9日、‌中国政府に批判的な論調で知られた香港紙・蘋果日報(リンゴ日報=廃刊)創業者で、香港国家安全維持法(国安法)違反罪などで有罪判決を受けた黎智英(ジミー・ライ)氏(78)に懲役20年‌の量刑を言い渡した。

全罪状につい​て無罪を主張していた黎氏は終身刑となる可能性もあった。法廷では、自らは中国当局からの迫害に直面している「政治犯」だと訴えていた。


裁判所は、同氏が外国勢力との結託を「首謀」した事実が量刑を加重したと指摘。リンゴ日報社員、活動家、外国人らを巻き込みながら、共謀して米国などに制裁や封鎖その他の敵対行為を求‌めたとする検察側の証拠を採用した。

黎氏のほか、リンゴ日報の元幹部6人と活動家1人、法律事務職員1人に対しても、6年から10年の懲役刑が言い渡された。

裁判所は「本件では、黎氏が起訴された3件全ての共謀罪の首謀者であることは疑いなく、相対的に重い刑が相当だ」とし「他の被告については、責任の程度を明確に区別するのは難しい」と述べた。

中国政府の香港マカオ事務弁公室は声明で、この判決は「国家安全保障を守る法律に挑む者は厳罰に処されるという厳粛かつ力強い宣言だ」と述べた。

香港の李家超(ジョン・リー)行政長官は「黎智英の犯罪は凶悪で、まったく許しがたい」と述べ、判決は法の支配を堅持するものだ​と語った。

これを受け、ルビオ米国務長官は9日、黎氏への判決は「不当かつ悲⁠劇的な結末」だと非難。当局に「人道的仮釈放」を認めるよう求めた。

また、英国のクーパー外相は、判‍決は「終身刑に等しい」と述べ、人道的見地から黎氏の釈放を要求。裁判を巡って迅速にさらなる取り組みを行うと表明した。

米国の非営利団体(NPO)ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は「香港では法の支配が完全に崩壊している。実にひどいこの判決は香港の報道の自由にとって最後のとどめとなるだろう」と指摘。「世界中で報道の自由が尊重されることを望むなら、国‍際社会はジミー・ライ氏の解放へ圧力を強めるべきだ」と述べた。

黎氏は白いジャケットを‍着て法廷‌に姿を見せ、両手を合わせて祈るような仕草をしながら、支援者らに笑顔で手を‍振った。

裁判所前では、傍聴を希望する数十人の支持者が数日間にわたり列をつくった。周辺には多数の警察官に加え、警察犬、装甲車、爆発物処理車両などが配備された。

黎氏は英国籍を持っており、複数の関係筋によると、スターマー英首相は先月、北京で習近平国家主席と会談した際、この問題を取り上げた。トランプ米大統領も昨年10月、習氏との会談でこの問題を提起して⁠おり、複数の欧米外交筋は、判決が言い渡された後に、黎氏の解放を巡る交渉が本格化する可能性が高いとみている。

黎氏の弁護士は、上訴するのかとの質問に、28日間の猶予があ⁠るとしてコメントを控えた。

黎氏の家族や弁護士、支持者‍、元同僚らは、同氏が動悸や高血圧などの持病を抱えているため、獄中で死亡する可能性があると警告している。

黎氏の息子は判決について「家族に深刻な影響をもたらし、父の命に関わる」ものだと述べ、香港の司法制度が​「完全に破壊された」と指摘。父親の早期釈放を求めた。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア担当ディレクター、エレイン・ピアソン氏は「78歳のライ氏に対する20年という過酷な判決は事実上の死刑宣告だ」と非難した。

一方、香港当局は黎氏の健康問題は「誇張されている」と述べ、当然の判決との認識を示した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2026トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月31号(3月24日発売)は「BTS再始動」特集。7人の「完全体」で新章へ、世界が注目するカムバックの意味 ―光化門ライブ速報―

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中