中国政府に批判的な新聞の創業者に懲役20年...中国は正当性アピールするも国際社会大反発
ジミー・ライ氏。2021年2月、中国・香港で撮影。REUTERS/Tyrone Siu
香港の裁判所は9日、中国政府に批判的な論調で知られた香港紙・蘋果日報(リンゴ日報=廃刊)創業者で、香港国家安全維持法(国安法)違反罪などで有罪判決を受けた黎智英(ジミー・ライ)氏(78)に懲役20年の量刑を言い渡した。
全罪状について無罪を主張していた黎氏は終身刑となる可能性もあった。法廷では、自らは中国当局からの迫害に直面している「政治犯」だと訴えていた。
裁判所は、同氏が外国勢力との結託を「首謀」した事実が量刑を加重したと指摘。リンゴ日報社員、活動家、外国人らを巻き込みながら、共謀して米国などに制裁や封鎖その他の敵対行為を求めたとする検察側の証拠を採用した。
黎氏のほか、リンゴ日報の元幹部6人と活動家1人、法律事務職員1人に対しても、6年から10年の懲役刑が言い渡された。
裁判所は「本件では、黎氏が起訴された3件全ての共謀罪の首謀者であることは疑いなく、相対的に重い刑が相当だ」とし「他の被告については、責任の程度を明確に区別するのは難しい」と述べた。
中国政府の香港マカオ事務弁公室は声明で、この判決は「国家安全保障を守る法律に挑む者は厳罰に処されるという厳粛かつ力強い宣言だ」と述べた。
香港の李家超(ジョン・リー)行政長官は「黎智英の犯罪は凶悪で、まったく許しがたい」と述べ、判決は法の支配を堅持するものだと語った。
これを受け、ルビオ米国務長官は9日、黎氏への判決は「不当かつ悲劇的な結末」だと非難。当局に「人道的仮釈放」を認めるよう求めた。
また、英国のクーパー外相は、判決は「終身刑に等しい」と述べ、人道的見地から黎氏の釈放を要求。裁判を巡って迅速にさらなる取り組みを行うと表明した。
米国の非営利団体(NPO)ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は「香港では法の支配が完全に崩壊している。実にひどいこの判決は香港の報道の自由にとって最後のとどめとなるだろう」と指摘。「世界中で報道の自由が尊重されることを望むなら、国際社会はジミー・ライ氏の解放へ圧力を強めるべきだ」と述べた。
黎氏は白いジャケットを着て法廷に姿を見せ、両手を合わせて祈るような仕草をしながら、支援者らに笑顔で手を振った。
裁判所前では、傍聴を希望する数十人の支持者が数日間にわたり列をつくった。周辺には多数の警察官に加え、警察犬、装甲車、爆発物処理車両などが配備された。
黎氏は英国籍を持っており、複数の関係筋によると、スターマー英首相は先月、北京で習近平国家主席と会談した際、この問題を取り上げた。トランプ米大統領も昨年10月、習氏との会談でこの問題を提起しており、複数の欧米外交筋は、判決が言い渡された後に、黎氏の解放を巡る交渉が本格化する可能性が高いとみている。
黎氏の弁護士は、上訴するのかとの質問に、28日間の猶予があるとしてコメントを控えた。
黎氏の家族や弁護士、支持者、元同僚らは、同氏が動悸や高血圧などの持病を抱えているため、獄中で死亡する可能性があると警告している。
黎氏の息子は判決について「家族に深刻な影響をもたらし、父の命に関わる」ものだと述べ、香港の司法制度が「完全に破壊された」と指摘。父親の早期釈放を求めた。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア担当ディレクター、エレイン・ピアソン氏は「78歳のライ氏に対する20年という過酷な判決は事実上の死刑宣告だ」と非難した。
一方、香港当局は黎氏の健康問題は「誇張されている」と述べ、当然の判決との認識を示した。
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