最新記事
ウクライナ戦争

受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」

A “Steel Porcupine” Strategy

2025年12月11日(木)06時00分
アンチャル・ボーラ (フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
英軍事施設で戦車の操縦・射撃訓練を受けるウクライナ兵と面会したゼレンスキー(2023年2月) ANDREW MATTHEWSーPOOLーREUTERS

英軍事施設で戦車の操縦・射撃訓練を受けるウクライナ兵と面会したゼレンスキー(2023年2月) ANDREW MATTHEWSーPOOLーREUTERS

<トランプの和平案が示すのは、ウクライナにとって決して信頼できる未来ではない。空虚な安全保証と欧米の後ろ向きな支援を前に、ウクライナは「誰かが守ってくれる」という幻想を捨て、自国軍の強化を最優先課題としている>


▼目次
プーチンに好意を抱く「ビジネスマン」トランプには期待できない
ロシアの「餌食」であり続けるしかないのか?

ロシアの対ウクライナ戦争を終わらせて平和を回復するための「取引」には、何らかの「安全の保証」が盛り込まれるらしい。もしもロシアが再び攻めてきた場合は諸外国がウクライナを支援するという確約だ。しかしそんな約束が絶対に守られるかといえば、そこのところは不透明だ。

アメリカのトランプ政権が望むのはロシアとの商取引だから、いざとなればウクライナ支援に及び腰になるのではないか。そんな和平の「取引」は単なる時間稼ぎで、ロシアの次なる侵攻は止められない──ウクライナ側には、現にそんな懸念がある。

だから各国の支持を取り付けるために世界を飛び回っているウクライナ政府の代表団も、最近は交渉戦略を修正してきた。そして今や欧州諸国との間で、恒久的な平和はウクライナ自身の軍事力で守るしかないという認識を共有しつつある。そもそもアメリカは米軍派遣の可能性を完全に排除しているし、欧州諸国にもロシアと一戦交える覚悟はないからだ。

そうであれば、ウクライナが取るべき最善の道は給与でも訓練でも、装備でも士気でもロシアに優る軍隊を構築し、傭兵や犯罪者に頼るロシア軍に対抗することではないか。国内の防衛産業を育て、生産力と技術力の両方でロシアを上回る必要もあるだろう。

パレスチナ自治区ガザでの戦争でもそうだが、ドナルド・トランプ米大統領は先に和平を宣言し、詳細は後で詰めればいいと考えている。その場合に有利なのはイスラエルのように軍事力で勝る国だ。ウクライナも、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長の言葉を借りるなら「鋼のヤマアラシ」になるしかない。ヨーロッパ外交評議会(ECFR)のラファエル・ロスに言わせれば、要するに「ロシアがのみ込めないほど強い国になれということ」だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン、米・イスラエル関連の域内経済・銀行拠点をを

ワールド

市場変動が経済への衝撃増幅も、さまざまなシナリオ検

ビジネス

「ザラ」親会社、2月は予想通り9%増収 25年の利

ワールド

ペルシャ湾内で商船三井の船舶に衝撃、船尾に損傷 乗
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 7
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 8
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 9
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 10
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中