「値下げ競争」が世界を守った?...米ソの冷戦が核戦争にならなかった理由は「数学で」説明できる
そのため、アメリカ軍がナッシュ均衡の概念を知り、「核開発を維持しつつ攻撃はしない」という戦略を選択し続けたのには納得がいく。ソ連に同様の研究者がいたかは定かではないが、結果的にはアメリカと同様の戦略を選択し続けた。
ソ連の戦略変更で世界はナッシュ均衡から抜け出した
皮肉にも核兵器という強大な戦力のおかげでナッシュ均衡が成立し、冷戦が第三次世界大戦へと発展しないまま時が流れた。1980年代、ソ連は深刻な経済停滞に陥り、核開発競争の負担が重くのしかかった。
この状況を打開するため、1985年に就任したゴルバチョフ書記長が改革政策を推進し、対外的にも「新思考外交」を展開してアメリカとの関係改善を図り始める。これらの改革は東欧諸国にも波及し、1989年には東欧で次々と民主化革命が勃発。象徴的な出来事としてベルリンの壁が崩壊した。
同年12月、アメリカのブッシュ大統領とゴルバチョフ書記長がマルタ会談で冷戦の終結を宣言。44年間続いた東西対立のナッシュ均衡からついに抜け出した。ナッシュの数学理論は、核開発こそ進めてしまったものの、核戦争という最悪のシナリオから世界を守り切ったのだ。
こうした社会への影響力から、1994年にナッシュはノーベル経済学賞を受賞した。5年後、経済学者ロジャー・マイヤーソンは次のように評価している。
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Fukusuke(ふくすけ)
数学史ライター&ブロガー。私立中高一貫校の数学教員。早稲田大学教育学部数学科を卒業し、2017年に同大学教職大学院を修了。数学サイト「Fukusukeの数学めも」を立ち上げ、月間8万PVにまで成長させた。サイトでは数学史をメインに、自身が授業で使用している数学ネタから大学数学の解説まで、幅広いコンテンツを発信している。
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