最新記事
FRB

米連邦準備理事会(FRB)、パウエル議長主導で「伝統的」金融政策に回帰か

2024年12月4日(水)14時38分

枠組み修正へコンセンサス

FRBは今、インフレ圧力がパンデミック以前よりも高止まりしたままで、金利水準はゼロを大きく上回っているので、非伝統的政策を解禁した17年前の「大不況」時代より昔のように、金利の上げ下げで目標達成ができると考えている。

実際に大きなショックが起きれば、そのような伝統的な金融政策の見せ場が戻ってくるかもしれない。


 

例えば一部のエコノミストは、トランプ次期政権の下で輸入関税による物価上昇と減税を通じた消費拡大、移民制限による労働供給不足が同時に発生すれば、FRBが現在健全で均衡していると見なす経済に波乱が生じてもおかしくない。

しかし、FRBの現行の政策運営の枠組みは07―09年の後の失われた10年と、パンデミック期のそれぞれの環境とリスクへの対応に特化し過ぎており、インフレにはもっと慎重な姿勢に戻るべきだというコンセンサスも形成されつつある。

FRBの調査部門も、こうした慎重な姿勢が雇用市場にも良い影響をもたらし、インフレが根付く前に抑え込むという旧来の哲学を復活させるのが望ましいとの意見が勢いを増していると示唆する。

エコノミストのクリスティナ・ローマー氏とデービッド・ローマー氏は9月のブルッキングス研究所の会議に向けた論文で「予防的な金融政策の行動は適切であるばかりか、必要不可欠だ」と記し、金融政策は的を絞る性質でないため貧困減少や格差是正はできない以上、意図的に過熱した労働市場を追求してはならないと訴えた。

パウエル氏も政策の枠組み修正を想定しているもようで、米国はFRBの過剰な支援を必要とする局面を脱したとの見解を示していることからも、修正は歓迎される方向になりそうだ。

パンデミック期にはFRBの権限を押し広げてきたパウエル氏だが、後継者には力を注ぐ対象をより限定した組織として委ねることになるかもしれない。

パウエル氏は今年11月の米南部テキサス州ダラスでの講演で「われわれが現行の枠組みを導入してから1年と4カ月後に、20年にわたる低インフレが幕を閉じた」と語り、より「伝統的な」中銀のスタイルに戻ることに言及した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ

ワールド

ミャンマー、総選挙第3段階は来年1月25日 国営メ

ビジネス

中国、ハードテクノロジー投資のVCファンド設立=国

ワールド

金・銀が最高値、地政学リスクや米利下げ観測で プラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中