「患者の命より自分の利益...」揺れる韓国医療、研修医ストライキが招いた悲劇の実態

KOREAN DOCTORS ON STRIKE

2024年11月7日(木)16時20分
ウヌ・リー(ライター)

さらに悪いことに、残った数少ない専門医は大都市圏の大手病院に集中する。地方には医療の空白が生じ、予防可能な死亡例が増えている。

この問題に確実に対処する方法は、公立の医科大学を設立し、学費を全額免除にして育てた医師を政府が雇い、一定期間、命に関わる診療科や地方病院での勤務を義務付けることだろう。だが韓国の医師たちは、これに一貫して反対してきた。


そこで、尹政権は次善の策を提示している。必要不可欠な医療サービスについて政府の定める診療報酬を引き上げ、医師たちが困難だが重要な診療科にとどまるインセンティブを与える、地方の病院にとどまる医師に特別ボーナスを支給する、などの対策だ。しかしストライキ中の医師たちは、政府が医学部の定員増を撤回しない限り、他の選択肢の議論には応じない構えだ。

どんなインセンティブを導入したところで、医師たちは結局、儲かる分野に吸い寄せられる。そうであれば、いっそのこと美容整形や皮膚科といった人気分野にもっと多くの医師を送り込み、市場を飽和状態にしてしまえばいい。供給が増えて需要が変わらなければ、医師1人当たりの収入が減るのは自明の理。そうなれば研修医たちも将来の進路を決める際に、もっと別の診療科を検討するかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額

ワールド

トランプ氏、ベネズエラと「並外れた」関係 石油富豪

ワールド

トランプ氏のイラン合意状況整備に期待、軍事行動回避

ワールド

ロシア、米との経済協力分野選定 ウクライナ戦争後見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中