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荒川河畔の「原住民」⑨

冬の寒さ、夏の暑さ、亡くなる時、欲求不満解消...ホームレス生活のリアリティー

2024年10月30日(水)19時15分
文・写真:趙海成

荒川河川敷のホームレス

2024年のある日、新荒川大橋付近でまた自殺者の遺体が発見された(左)。6人の警察官が自殺者の死体を運び出している

「アルミ缶拾いで知り合った友人もいた。自殺する前日、川べりの露天椅子に座ってぼんやりしていたのを見た。私は何も言わずに去ってしまった。まさか、彼が生と死の選択に苦しんでいたとは思わなかった。悲しいことに、彼の死体は翌日、荒川の水門に現れた。前日に彼を見たとき、何も話さなかったことを後悔した。少しでも慰めたり励ましたりすればよかった」

3人目は、不慮の事故だったという。


「さっき話した2人は、どちらも年を取っていた。次の人はまだ40代で、川辺で釣りをしていた釣り友達。ふだんは会うと挨拶するだけの付き合いだった。後で聞いたところ、彼は住まいでランプを動かしているときにうっかり手を滑らせて火事になり、火の海に倒れて、命を落としたそうだ」

荒川河川敷でホームレスの生活と健康状態の調査をしている「兄貴」(彼の物語は次回語る)は、ここ数年で、餓死したり自殺したりした7、8人のホームレスの死体に遭遇したことがある。その多くは高齢者だが、中には40代の人もいた。

テント内で亡くなった人もいれば、木の幹に吊るされた(首を吊った)状態の人もいた。その場面は見るに忍びないという。「兄貴」はそういう場合、携帯電話で警察に通報し、遺体を引き取りに来るよう伝えるのである。

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