「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

OPPORTUNIST SUPREME

2024年7月5日(金)17時18分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

newsweekjp_20240704050449.jpg

2005年の第3次小泉内閣では環境大臣としてクールビズの旗振り役に JUNKO KIMURA/GETTY IMAGES

その後は鳴りを潜めたが、コロナ禍を経て、仇敵・自民党都連会長の萩生田光一に頼られるほどの存在感を放ちつつ、知事3選をうかがう位置にいる。この小池の力の源泉は何なのか。今、どんな新しい価値を取り込もうとしているのか。そして、足場とする都庁で何が起きているのだろうか。

トランプそっくり

小池の発信には独特のスタイルがある。「ブラックボックス」や「チルドレンファースト」など、横文字交じりのもっともらしい言葉選びで人々の意表を突き、時に「人民の敵はあいつだ」とばかりに敵を名指しして喝采を浴びようとする。


2期目の任期中、都民の健康や生命を脅かす新型コロナの現場指揮官としてすら、そうだった。

例えば初期最大の危機だった21年正月早々、小池が、埼玉、神奈川、千葉の3県知事と連れ立って内閣府にコロナ対策担当相の西村康稔を訪ねた「事件」をご記憶だろうか。やおら緊急事態宣言の発出を求め、拒む政府を押し切って新年のお茶の間をアッと言わせた。

ただ本来、追及を受ける立場にあったのは小池だ。大みそかには都内で約1300人という過去最大の感染者数を記録し、重症者も急増して全国に不安が広がっていた。小池はその一瞬を捉えたのだが、直前まで対応を迫られていたのは小池その人だった。

さかのぼれば20年秋から感染が拡大するなか、慌てた国の専門家が11月20日、GoToトラベルの停止などを求める提言を発表。大阪府や北海道の知事は一部停止に応じたのに対し、観光客の最大の供給地である東京都の小池は無反応だった。

国民に嫌がられる対応には手を出さないのが小池流。都合が悪いと記者に質問をさせないのも常套手段だった。たまたま同じ日に行われた定例会見は実に異様で、40分ほどの枠の半分以上を、小池自身が都の事業発表を読み上げることでつぶすのだ。いずれも目の前の危機とは関係ない、資料を配れば済む話なのに。

クラブ所属の記者でもさすがにたまらずGoToをやめないのかと聞くと、小池は「国が責任を持ってやっておられると考えております。それを徹底していただきたい」。こうして対応はずるずると遅れていった。

先送りの責任が問われる窮地にあったはずが、正月に一転、動きの遅い政府を動かす救世主であるかのように登場して、攻守を切り替えることに成功。悪者は緊急事態宣言に消極的な首相の菅義偉だ、という構図に塗り替えてしまった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米戦闘機2機、イランが撃墜 乗員2人救助・1人不明

ビジネス

アングル:インドへの高級ブランド進出、実店舗スペー

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中