最新記事
プーチン

ロシアにイスラム過激派の脅威、ウクライナとの二正面

2024年6月27日(木)10時47分
プーチン大統領

6月25日、 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナで続く戦争が西側諸国との間で繰り広げられている存亡を賭けた闘争の一環であり、全ての国力を集中させる必要があると訴えている。写真は3月、モスクワ近郊のコンサートホールで起きた銃乱射の犠牲者を悼む式典で、ろうそくに火を灯すプーチン氏(2024年 ロイター/Sputnik/Mikhail Metzel)

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナで続く戦争が西側諸国との間で繰り広げられている存亡を賭けた闘争の一環であり、全ての国力を集中させる必要があると訴えている。しかし23日にダゲスタン共和国で起きた教会などの襲撃事件は、ロシア国内でイスラム系武装勢力の脅威が増大しつつあり、プーチン氏が資源配分の見直しを迫られる可能性を浮き彫りにした。

ロシア正教の教会やシナゴーグ(ユダヤ教会堂)、交通警察詰め所などが武装勢力に襲われ、少なくとも20人が死亡したこの事件で、ロシアの情報部門や治安部門が適切に対処しているのかとの疑問が浮上している。

これらの部門は対ウクライナ戦や、ウクライナに関係する勢力がロシア国内で起こす攻撃の可能性へ大半の注意を向けていたところで、まさに不意打ちを食らった形だ。

元ロシア政府のアドバイザーでダゲスタンを含む北カフカス地方の訪問から戻ったばかりのセルゲイ・マルコフ氏は「ロシアでイスラム過激派が再び台頭してきている。テロを巡る問題が存在し、それが非常に深刻であるのは間違いない」と語った。

報道によると、今回の襲撃事件には4月までテロ対策会議を主催していた地元当局者の親族2人や、親ロシア政党の派生団体に属していた人物などが関係しており、地域エリートへのイスラム過激派の浸透ぶりがうかがえる。

さらにこの事件で、国内の治安を確保するというプーチン氏が長らく国民に対して行ってきた約束も揺らぐことになる。

同時にロシア指導部は、大多数がイスラム教徒で貧困にあえぐダゲスタンの統治方法の再検討も必要となるかもしれない。

ダゲスタンでは昨年10月にも、マハチカラの空港でイスラエルのパレスチナ自治区攻撃に抗議するデモ隊が暴徒化し、滑走路に侵入してイスラエルからの到着機を取り囲む騒動が起きている。

一方でダゲスタンはロシアにとって軍事的に重要な場所で、ロシア海軍カスピ小艦隊の軍港が建設中だ。

この地域の紛争情報を伝えている中立系団体「ホラサン・ダイアリー」のリッカルド・バッレ氏はロイターに、過激派組織「イスラム国」(IS)などがロシアとウクライナの戦争が自分たちにもたらしている活動機会について話し合っていると明かした。

バッレ氏によると、この戦争でロシアと西側はISとの対決で重要な協力ができなくなり、ロシア側はIS問題に十分な資源を振り向けられなくなった。またダゲスタンで起きた今回の事件で、ロシアの情報収集分野で「大きな穴」があることも分かったという。

同氏は、西側とロシアがいずれもウクライナに関心を注ぐ中で、イスラム過激派がその間隙を突いて攻撃を仕掛けられると指摘した。

相次ぐ事件

今年3月にはモスクワ郊外のコンサートホールが武装集団に襲撃され、150人近くが犠牲になる事件があった。またほんの1週間前には、ロシア南部ロストフ・ナ・ドヌーの拘置所で、ISに関係する受刑者グループが職員を人質に取る騒動が発生した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ

ビジネス

JPモルガン、オフショア人民元ロングを解消 元高抑

ワールド

独失業者数、2月は小幅増 失業率6.3%で横ばい
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 6
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 7
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 10
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中