最新記事
イスラエル

対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃か、重要人物暗殺か、ハイテクで恥をかかせるか

3 Ways Israel Could Respond to Iran

2024年4月16日(火)18時39分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

元米国防当局者のマルロイは、「(イランから初の直接攻撃を受けた)イスラエルは、イラン国内に直接反撃することを選ぶ可能性が高い。だが戦闘拡大を阻止するために、アメリカがイスラエルを思いとどまらせようとするだろう」と述べた。

それでもイランに対して反撃しない訳にはいかないイスラエルとしては、イラクやシリアなどイラン国外にいる革命防衛隊の司令官に対する暗殺作戦を強化する可能性もある。4月1日にイラン革命防衛隊の対外工作部門「コッズ部隊」の司令官だったモハンマド・レザ・ザヘディ准将と副官らが死亡した、シリアのイラン大使館への攻撃と同じような作戦――つまり今回のイスラエルとイランの暴力の応酬の発端となったのと同じような攻撃を行う可能性もある。

 

しかし13日から14日にかけてのイランによる報復攻撃――および2000年1月にイランがアメリカによる革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官(当時)殺害の報復として、イラクで米軍が駐留する施設を弾道ミサイルで攻撃した一件――から分かるように、イスラエルがイランの軍指導者を攻撃すれば、それがイラン国内であろうと国外であろうと、事態を大幅にエスカレートさせる危険がある。


だが重要人物を殺害することが、イスラエルにとって時間稼ぎになる可能性も考えられると、ロードは指摘する。その期間は数週間、さらには数カ月に及ぶかもしれないという。バイデン政権はそのような攻撃を支持しないかもしれないが、アメリカ政府との関係はぎりぎり保ちつつ、イランのさらなる報復を抑止するには十分かもしれない。

「IDF(イスラエル国防軍)は勝利を好むが、守りに入った勝利は好まない」と指摘するのは、2019年から2022年にかけて米中央軍司令官を務めたフランク・マッケンジー退役海兵隊大将だ。マッケンジーによるこの発言があったのは、4月15日、JINSA(安全保障問題ユダヤ研究所)が主催したイベントでのことだ。

それでも、ハジザデ(イラン革命防衛隊航空宇宙部隊司令官)のような指導者やイラン革命防衛隊の施設を攻撃することには、作戦失敗のリスクがある。作戦は夜間に実施する必要があるかもしれないが、イスラエルからの報復を予期して、イランの軍事リーダーたちは身を隠している可能性もある。

「イランは現在、高いレベルの警戒態勢にある」とマッケンジーは付け加えた。「幹部たちは、シェルターのなかにいるだろう」

また、アメリカや他の国々からの自制を求める圧力も、即座の反撃を思いとどまらせる効果があるかもしれない。

「我々が先を見越して動き、即座に国連安保理を招集したという事実、(バイデンが)すぐさまイスラエル首相に電話をかけ、報復を支持しないと伝えた事実、これら2つの要素によって、イスラエルのイランに対する、より積極的な攻撃の可能性は小さくなっているはずだ」とサーブは指摘した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中