最新記事
アメリカ大統領選挙

トランプ「ウクライナの次は台湾だ」再登板で米国は台湾を見捨てるのか?

TRUMP AND TAIWAN

2024年3月8日(金)16時01分
アーディル・ブラール
トランプ「(ウクライナの)次は台湾だ」再登板で米国は台湾を見捨てるのか?

アメリカで支援者に向けスピーチをする次期台湾総統の頼清徳(昨年8月) LOREN ELLIOTTーREUTERS

<トランプはインタビューでは台湾を守る意思を明確にせず、「半導体産業を奪われた」とお門違いの非難も展開する。再選すれば台湾海峡、波高し。本誌「もしトラ」特集より>

中国政府によれば、米大統領選でドナルド・トランプが再選された場合、アメリカは台湾を見捨てる可能性があるらしい。

「アメリカは常に『アメリカ第一主義』を追求している。台湾は『将棋の駒』から『捨て駒』にいつでも変わり得る」と、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の陳斌華(チン・ピンホア)報道官は1月末に述べた。

これは昨年7月、トランプが経済専門ケーブルテレビ局FOXビジネスのインタビューで、台湾が半導体産業を独占していると批判するとともに、台湾防衛への積極姿勢を見せなかった件についてコメントを求められて答えたものだ。

問題のインタビューでトランプは、台湾が中国による侵略の対象となる地政学的リスクについて問われ、「かつてアメリカは、自分たちの半導体を自分たちで作ってきた。だが今や半導体の90%は台湾製だ」と語った。

「台湾はアメリカのビジネスを奪い去った。われわれは連中を止めるべきだった。税金をかけるべきだった。関税をかけるべきだった」

そしてトランプは「その(有事の際に台湾を守るかどうかという)質問に答えてしまうと、交渉における私の立場は非常に悪くなるだろう」と述べた。

有事を回避するためのアメリカと台湾、中国の間の駆け引きがいかに複雑かは、分かっているらしい。

だが、半導体産業の問題と安直に結び付けて語ったことには批判も出た。

「トランプ(前)大統領の発言は、中国政府を喜ばせるだけだ」と、戦略国際問題研究所の中国専門家ブライアン・ハートは本誌に語った。

「中国側はアメリカの信頼性に対する疑念を台湾の大衆に広げる手段として、SNSなどを使ってきた」

中国政府は台湾は中国の一部だと主張し、1月の台湾総統選挙を「平和か戦争か」の選択と位置付けていた。

だが勝利したのは、中国とは距離を置く民進党の頼清徳(ライ・チントー)。総統選が直接選挙になって以降、同じ政党が3期連続で政権を担うのはこれが初めてだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「CT写真」で体内から見つかった「驚愕の塊」
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 10
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中