最新記事
教育

学校の宿題が多い日本と少ないフランス......教育にはどちらがいいのか?

2023年11月22日(水)12時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

なお宿題といっても数分で終わる簡単なものがあれば、手間がかかるものもある。上記の調査では、「どれくらいの時間がかかる宿題を出すか」もたずねている。回答分布から平均値を出すと、日本は22分であるのに対しフランスは10分だ。横軸に宿題を出す回数、縦軸に宿題に要する時間の平均値をとった座標上に、調査対象の57カ国のドットを配置すると<図2>のようになる。

data231122-chart02.png


右上は、比較的ヘビーな宿題が多く出る国で、旧共産圏やアジア諸国が多い。日本もこのゾーンで、勤勉な国民性と関連があるのかもしれない。

対局の左下にあるのは、宿題に重きが置かれない国だ。フランスはこの典型で、自由の国・オランダも近辺にある。韓国もこのタイプで、他のアジア諸国と隔たっているのは意外だ。超受験社会で、早いうちから塾通いなどをする子が多いためか。右上は大きな課題を少数出す国で、イタリアが該当する。

宿題が多い国があれば、そうでない国もある。それぞれのお国柄の所産で、どちらがいい・悪いという話ではない。

長期休暇中の宿題など子どもの才能の芽を摘む足かせで、夏休みくらいやりたいことをうんとやらせればいいのではないか。ユーチューバーを志す子がいるなら、思う存分動画を作らせればいい。理想と現実のギャップを知る機会にもなる。こういう考えもあるだろう。

一方で、夏休みの宿題は大きな仕事をコツコツ計画的に成し遂げることを体験させる「隠れたカリキュラム」でもあり、それを取り上げるのは、子どもの成長を阻むことにもなる、という捉え方もあるだろう。

極端な結論は出さず、地域や学校の実情に応じてグラデーションをつければいい。だが最近流行っている宿題代行業は感心できない。子どもを受験に集中させたい親から依頼を受けてやっていることだが、ズルをしてもいいのだと子どもに教え込むことになってしまう。宿題は学習指導要領で定められたことではないので、取り締まりのしようがないのだが、文科省もよくは思っていない。

現在は「代行」の時代だが、許される代行もあればそうでない代行もある。この区別はつけておきたいものだ。

<資料:IEA「TIMSS 2019」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、米テキサス工場に5億ドル超の投資を検討

ワールド

米国務長官「適切な措置講じる」、イスラエル首相らの

ビジネス

日産、米でEV生産計画を一時停止 ラインナップは拡

ワールド

EU、ロシア資産活用計画を採択 利子をウクライナ支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中