最新記事
中国

中国不動産バブル崩壊で地方役人は戦々恐々

2023年10月3日(火)14時50分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
創業者・会長の許家印(中央)も当局に拘束されたとみられる

創業者・会長の許家印(中央)も当局に拘束されたとみられる VCG/GETTY IMAGES

<中国不動産市場のメルトダウンが始まった>

中国メディア財新は9月25日、経営危機に陥っている不動産大手・中国恒大集団の夏海鈞(シア・ハイチュン)前CEOと潘大栄(パン・ターロン)前CFOが当局に拘束されたと報じた(両者は財務関連のスキャンダルに関連して昨年辞任)。

子会社・恒大財富のスタッフ拘束に続く幹部の逮捕は、中国の不動産セクター(および関係金融機関や政府当局者)にとって危機が続いていることを示すものだ(その後、同社は創業者の許家(シュイ・チアイン)印会長が法律違反の疑いで「強制措置」の対象になったと発表。拘束され取り調べを受けているとみられる)。

恒大は、ほかの不動産開発業者と共に会社清算となる可能性がある。国内外の債権者は新たな債務返済計画の欠如にいら立ち、再建は絶望的だと嘆いている。

恒大は25日、支払い期限を迎えた傘下企業発行の人民元建て債40億元の元本未払いを公表。業績低迷のため、以前の再建計画を断念せざるを得ないと発表した。このニュースを受け、同社の株価はさらに19.1%下落した。

恒大だけではない。不動産セクター全体の株価も25日に7.1%下落した。8月には政府のテコ入れ策によって株価は一時持ち直したが、本格的な回復には至っていない。

不動産市場のメルトダウンが国民のパニックを引き起こすことを恐れた地方政府は、住宅価格の下限を設定して人為的に下支えしているが、それでも価格下落は止まらない。販売額は急落し、中国経済全体に激震が走っている。

不動産セクター、銀行システム、地方政府の債務は相互に深く関連し、問題が深刻化した場合の影響は大きい。

現在の不動産危機が起きる前の数年間、地方政府にとって土地使用権の売却は収入の柱であり、資金調達の20~30%を占めていた。土地を購入したのは不動産開発業者だったが、資金の大半は銀行からの融資だった(当時は容易に返済できると思われていた)。

中国人の投資家も不動産を安全な投資先とみていた。さらに地方政府は、将来の売却を前提に負債を積み上げていた。

このシステムの関係者は全員、個人的なつながりもあった。不動産業者、銀行員、政府当局者は食事を共にして歓待し合った。直接的な賄賂から談合まで、あらゆるレベルで汚職が蔓延していた。

中国の不動産セクターはGDPのおよそ3割を占めている。買い手はマイホームを購入するファミリー層や個人投資家だけではない。余剰資金を持つ多くの企業も高利回りに引かれ、本業に再投資する代わりに不動産に投資した。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中