最新記事
武器輸出

韓国防衛産業にウクライナ戦争特需、欧州の需要を取り込み武器輸出大国目指す

South Korea Is Cashing In on NATO's Standoff With Russia

2023年7月18日(火)22時41分
エリー・クック

韓国から届いたK2戦車の上でポーズを取るポーランド兵(3月30日) REUTERS/Kacper Pempel

<ロシアに対する警戒を強めるポーランドとの大型武器取引を見て、旧東欧諸国は新しい武器調達のオプションに目覚めた。欧州製より安くて納期も短い韓国製だ>

<動画>ウクライナによるドローン攻撃により、ロシアT-90戦車が爆撃を受ける瞬間の映像

韓国は武器生産大国としての地位を固めつつあり、武器輸出額は今後4年間で2021年比で最大87%増加する見込みだ。

国営シンクタンクの韓国産業研究院の研究を引用した韓国英字紙コリア・タイムズの記事によれば、2021年には125億ドルだった韓国の武器輸出額は、2027年までに約234億ドルに達する見込み。また韓国防衛産業の雇用者数は2021年の3万3000人から2027年までに約6万9000人に増加するという。

ウクライナ戦争で軍装備品や武器の需要が拡大するなか、韓国は武器輸出を急速に拡大しており、武器売却大国の仲間入りを果たそうとしている。ただし、戦争中のウクライナに殺傷力のある武器を直接供給することは拒否しており、戦争遂行に必要な人道支援や軍需品に限って提供している。ウクライナに殺傷力のある武器を供与することで、ロシアを敵に回すことを警戒しているのだ。

ロイターは5月、2022年の韓国の武器売却額は2021年比で100億ドル近く増加し、170億ドルを超えたと報じた。韓国の尹錫悦大統領は、今後数年間で、アメリカやイギリス、中国、ドイツなどと競合する世界有数の武器輸出国になると宣言している。

4大輸出国目指す

尹は2022年夏、「アメリカ、ロシア、フランスと並ぶ世界4大防衛輸出国の仲間入りを果たすことで、韓国の防衛産業は戦略産業となり、韓国は防衛大国になるだろう」と述べた。

韓国の武器輸出拡大は、大部分がポーランド向けのものだ。尹は2023年7月13日、ポーランドが韓国から武器を追加購入することで合意したと発表した。韓国とポーランドが2022年に合意した韓国史上最大137億ドルの武器輸出合意に続くものだ。

ポーランドは2022年9月、韓国から軽戦闘爆撃機「FA-50」48機を購入する契約を結び、2028年までに納入されることになった。韓国国防部は2023年6月中旬、ポーランドが旧ソ連時代の戦闘機を退役させた後、FA-50がポーランド空軍の後継機になると述べた。

韓国国防部のプレスリリースによれば、2023年末までに12機をポーランドに納入する予定だ。ポーランドはウクライナの同盟国であり、ソ連時代のMiG-29戦闘機をウクライナ空軍に寄贈している。

ポーランドはまた、韓国のK2主力戦車とK9自走りゅう弾砲も購入する。

ポーランドのマリウシュ・ブワシュチャク国防相は2022年11月、「2022年が、ポーランドと韓国の実りある防衛産業協力の始まりになることを確信している」と述べた。韓国とポーランドは同月、韓国のK2主力戦車とK9自走りゅう弾砲の供給に関する57億ドル相当の契約に合意した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中