最新記事

韓国

韓国の武器輸出が過去最高に その理由とは? そして、日本への影響も

2022年12月20日(火)18時30分
佐々木和義

韓国の武器輸出が急激に伸びている 韓国のK2戦車 wikimedia

<韓国では、欧州を中心に武器需要が伸びている。その理由と日本への影響は?>

韓国は2022年1月から11月の武器輸出契約が170億ドル(約2兆4000億円)を突破した。ウクライナ戦争の影響で欧州を中心に武器需要が伸びており、年内には200億ドル(約2兆8000億円)を超えると見込まれている。昨年の輸出契約72億5000万ドル(約1兆60億円)の2.8倍で、いうまでもなく過去最高だ。

ポーランドと約2兆円の輸出契約を締結

韓国防衛産業は今年、ポーランドと147億6000万ドル(約2兆470億円)の輸出契約を締結した。K2戦車980両、K9自走砲648門、FA-50軽攻撃機48機、多連装ロケット砲288門などである。

ポーランドはロシアの侵攻を受けたウクライナに戦車を提供するなど積極的な支援を行った穴埋めに米国やドイツの武器購入を検討したが、納入まで時間がかかるという回答を受け、はるかに安い価格と早い納期を提示した韓国と購入契約を結んだ。

K2戦車は韓国が180両を輸出後、800両をポーランドで現地生産し、K9自走砲も韓国が48門を輸出して600門を現地生産する計画だ。

FA-50は韓国宇宙産業(KAI)が2023年半ばまでに12機を納入してパイロット養成学校の設立を支援する。現在、東欧にパイロットの養成学校はなく、多くのパイロットが米国で教育を受けているという。FA-50は米国のF-16戦闘機をベースにKAIがロッキード・マーチン社の技術支援を受けて開発・製造したT-50練習機の派生型で、2013年から運用を開始したが、戦力化した2014年から5年間で7回の機銃故障が発生、空軍が射撃訓練を禁止するなど機銃なしで出動した日数が5年間で331日に達している。

旧ソ連製のミグ29とNATO加盟後に導入したF-16を運用しているポーランドは「FA-50は技術面での効率性が85%」と評価する。ベストではないが及第点という評価だろう。

韓国はこれまでT- 50練習機をインドネシア、フィリピン、タイなどに輸出した。またK9自走砲はフィンランド、インド、ノルウエーが導入しており、オーストラリア、エストニア、エジプトも導入が決まっている。

各国が韓国製を選ぶ理由は3つある

各国が韓国製を選ぶ理由は3つある。価格と納期、米露中との関係だ。一般に武器開発は自国軍の要請で行われる。米軍の要請で開発される米国製武器は質が高いが価格も高い。日本も2014年以降、武器輸出が可能となったが、自衛隊の要請で開発された武器は先端技術が盛り込まれるなど質が高く、生産数が少ないことも相まって高額だ。

米露中との関係は、米国とロシア、米国と中国が対立するなか、主要武器購入国でもある北大西洋条約機構(NATO)関係国がロシアや中国の武器を購入することはもちろんないし、米露中のいずれにも与せず中立な立場を取る国も米国製武器を購入するとロシアや中国との関係が悪化し、ロシア製や中国製を購入すると米国との関係が悪化しかねない。韓国はNATO関係国から見ると米国の同盟国だが、中立国も米露中との関係が悪化する危惧が小さいとみて韓国製が選択されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ウォン安と不動産価格上昇、過剰流動性だけが背景では

ビジネス

12月の豪消費者信頼感指数、悲観論が再び優勢 物価

ビジネス

ベトナムEVビンファスト、対インドネシア投資拡大へ

ワールド

EUメルコスルFTAに暗雲、仏伊が最終採決延期で結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中