最新記事
注目ニュースを動画で解説

世論操作も余裕... 生成AIがスパイ組織にとって「夢のツール」と言える理由【注目ニュースを動画で解説】

2023年6月14日(水)18時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
生成AIの脅威

Newsweek Japan-YouTube

<世界情勢に桁外れの影響を及ぼす「制限なき生成AI」の脅威を取り上げたアニメーション動画の内容を一部紹介する>

「チャットGPT」をはじめとする生成AIを駆使すれば、敵国の世論にひそかに影響を与えて社会を揺さぶることができる。各国の情報機関や悪意あるアクターが、こうしたAIシステムを積極的に利用することで世界はますます危険な場所になろうとしている。

元CIA諜報員で本誌コラムニストのグレン・カールが「生成AIはスパイ組織の夢のツール」と明言する理由とは──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「【ChatGPT】世論操作も余裕...「生成AIはスパイ組織にとって夢のツール」【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

◇ ◇ ◇

新しい通信技術やソーシャルメディアを駆使した秘密工作は、既にこの10年間にウクライナやイギリス、スウェーデン、フランス、インド、香港、アメリカなどの世論を動かしてきた。生成AIは、さらなる影響を世界情勢に与えようとしている。

nwyt_ai1.jpg

生成AIの脅威について専門家が警鐘を鳴らす中、各国の情報機関は劣勢に立たされる不安から競ってこの最新技術を使おうとしている。

nwyt_ai2.jpg

情報機関は伝統的に、自らが広めたい説を裏付ける作り話や噂を広めることで、ターゲットとなる人々の意見や主張を変えようとしてきた。

1953年には、イランで親欧米的なモハマド・レザ・パーレビ国王を権力の座に就けるべく、CIAとイギリスの情報機関が協力して激しい宣伝工作を展開。その結果、モハンマド・モサデク首相を失脚させるための数千人のデモ隊をわずかなコストで出現させることができた。

nwyt_ai13.jpg

生成AIの影響はその数千倍にもなるとみられる。

ターゲットの特性に合わせたチャットボット(自動会話プログラム)を作って、同じ意見や主張をいくつもの表現方法で世の中にあふれ返させることができれば、社会の幅広い層が同じ意見を抱いているような錯覚を生み出すこともできる。

nwyt_ai6.jpg

説得力のある噂や誤り、嘘が無数のボットから流されることで真偽の識別は一層困難になる。専門家や政府、メディアへの国民の警戒心や冷笑的態度はさらに強まるだろう。

nwyt_ai8.jpg

メディアリテラシーの向上や全ての生成AIへの「識別子」義務付け、政府による規制など、リスク軽減の手段はあるものの、その効果は限定的だ。

生成AIによる工作は、2016年の米大統領選でロシアが行った偽情報作戦、19年の香港デモで中国政府が展開したソーシャルメディア上での膨大な数のプロパガンダ投稿など、過去の事例と比べても桁外れに強力なものになることが予想されている。

nwyt_ai12.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ワールド

中国、EU産豚肉関税を引き下げ 1年半の調査期間経
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中