最新記事

ロシア

ウクライナとNATOに最大の脅威、黒海配備が噂されるロシアの極超音速核ミサイル

Chinese Pundit Warns Russia May Bring Major New Threat to Black Sea

2023年3月2日(木)18時46分
ローレン・ジエラ

南アフリカ、中国との海軍合同演習に参加したフリゲート鑑ゴルシコフ Russian Defence Ministry/REUTERS

<核弾頭搭載可能で、西側の防空システムを破ることができる極超音速ミサイル、ツィルコンの配備をもくろむロシアに、ウクライナとNATO諸国は警戒感を強めている>

2月27日に南アフリカ、中国との海軍合同演習を終えたロシア軍は、黒海に危険な兵器を持ち帰る可能性があると、中国の軍事評論家は語った。

ロシアの国営タス通信は2月27日、ロシア海軍の艦隊が中国、南アフリカの海軍とインド洋で合同演習を行った後、長距離展開任務を継続すると報じた。

10日間にわたる演習の間、3カ国の海軍は戦術的作戦訓練を実施した。タス通信は、ロシア北方艦隊の報道発表を引用し、艦隊が砲撃訓練、機雷掃海、救助活動に参加したことを伝えた。これらの作戦を主導したのは、ロシアのフリゲート艦「アドミラル・ゴルスコフ」と中型海洋給油船「カーマ」だった。

中国人民解放軍の元教官で軍事評論家の宋忠平(ソン・チョンピン)によれば、今回の演習の目的は、黒海における西側の防空システム突破を目指したものだったという。宋は、香港フェニックスTVの論客であり、中国のタブロイド紙環球時報にも頻繁に寄稿している。

「昨年4月ロシア黒海艦隊は旗艦、巡洋艦モスクワが沈没させられて、戦闘能力が低下した。それを補うために、極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を装備したゴルスコフが黒海に配備される可能性がある」と、宋はサウスチャイナモーニングポストに語った。ツィルコンは高速のため既存の防空システムは対応できず、核弾頭も搭載可能だ。

【動画】極超音速ミサイル「ツィルコン」の発射実験

NATOの防空システムを突破

ロシアの極超音速ミサイルは、NATOの防空システムを貫通し、「ウクライナの地上目標を破壊する」ことができるため、ウクライナ軍と西側同盟国にとって大きな脅威になりかねない、と宋は言う。

ウクライナ南部軍司令部は、ロシア軍が28日に黒海艦隊に新たな艦船を追加したと報告した。現在、ミサイル艦5隻と潜水艦2隻を含む17隻が配備されている。南部軍司令部によれば、艦隊全体で、最大32発の巡航ミサイル「カリブ」を搭載できる。

西側諸国はこれまでも、ロシアの北方艦隊の艦船に戦術核兵器が配備されていると警告してきた。

ノルウェーの諜報機関は「北方艦隊の潜水艦と水上艦が核戦力の中心になる」と報告。さらに、ロシアの戦術核兵器はNATO諸国に「特に深刻な脅威」をもたらす、と付け加えた。

「さらに、ロシアは特にノルウェーとNATOを脅かすことができる水中の戦闘能力、対衛星兵器、サイバーツールを有している」とも報告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独プーマ、第1四半期は売上高が予想と一致 年内の受

ビジネス

外貨準備高、4月末は1兆2789億ドル 「外貨証券

ワールド

米下院、ジョンソン議長の解任動議却下 共和党保守強

ビジネス

米マイクロソフト、ナイジェリアの開発センター閉鎖・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中