最新記事

日本

ドミニク・チェンが語る、2050年のSNS・コミュニケーション・自律分散

THE BEST WAY IS TO INVENT IT

2023年2月15日(水)16時48分
ドミニク・チェン(情報学研究者)

――どんな解決策があり得るでしょうか?

プラットフォームの問題は、ビジネスモデルの在り方やジェロントクラシー化する社会構造という人間の側の問題が、テクノロジーによって助長されているにすぎないとも言えます。だとしたら、そうならないように物事を進めるプロセス自体をテクノロジーで進化させることが重要です。

特定の管理者がいない分散型の次世代ウェブを表すweb3や、DAO(自律分散型組織)周辺の技術の考え方は、その一部であるブロックチェーン技術を使ったビットコインなどが投機的に動いているので、一見、希望を見いだしづらい現状があります。だけどそうした技術に適切な規制を設けて、社会的な意義のある運動などに実装していければ、今までにない組織の在り方をつくる可能性は失われていないと思います。

――web3的、自律分散的な考えで既に実践されているものはありますか?

web3そのものではないですが、ここで想起するのは、台湾で議会を占拠した「太陽花(ヒマワリ)革命」の学生たちから生まれたITで社会課題の解決を目指すコミュニティーのg0v(ガブゼロ)で、政府との緊張感のある対話を通じて政策にも影響を与えています。一番有名なメンバーのオードリー・タンは政府に閣僚として入りました。

日本でもアメリカ発の運動に影響を受けたコード・フォー・ジャパン(CFJ)で似たような試みが見られます。CFJはスペイン発の市民政治参加型デジタルプラットフォームDecidim(デシディム)を日本で展開しています。デシディムは誰でも利用や開発を行えるオープンソース方式で開発されていて、すでに加古川市や横浜市が導入して若い世代などからさまざまな提案を吸い上げて政策に生かしています。

また2004年の中越地震以降、過疎化が進んだ新潟県長岡市の旧山古志村(人口約800人)ではDAOをつくっています。山古志地域が発行するNFT(非代替性トークン)の電子住民票を村外の約1000人が購入して「デジタル村民」となり、その予算で住民と一緒に振興策を考え、投票しています。

これらはみなデジタルテクノロジーを使って不特定多数の人々がコミュニケーションを取りながら合意を形成していく、ガバナンスの新しいやり方といえるでしょう。

ここからSF的な発想で飛躍させると、例えば日本中の地方自治体が市町村レベルに至るまでDAOで運営され、住民が自分たちの街の在り方について非同期・オンラインでいつでも話し合いができる、というようなことが考えられるかもしれません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中