最新記事

ゼレンスキー

租税回避を暴いた「パンドラ文書」にゼレンスキー夫妻の名

Was Volodymyr Zelensky in the Panama Papers? Offshore Companies Revealed

2023年1月25日(水)18時13分
ジャック・ダットン

NATO首脳会議で支援を求めるゼレンスキー(2022年11月21日、スペインのマドリード) Juan Medina-REUTERS

<戦争続行のための汚職対策を始めたウクライナで、ゼレンスキー大統領の側近や政府高官の辞任や解任が相次いだ。だがゼレンスキーにも、疑惑の過去がある>

ウクライナ政府は最近、戦時下の国民の支持を固めるために汚職の告発を始め、1月24日にはウクライナ大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官をはじめとするゼレンスキーの複数の側近や政府高官の辞任や解任が相次いだ。だが、「反オリガルヒ(新興財閥)」と「反腐敗」を掲げてウクライナの大統領になったウォロディミル・ゼレンスキー自身にも、疑惑がないわけではない。

ゼレンスキーとその側近たちのオフショア企業ネットワークは、2016年に世界の政治家や富豪の租税回避や資金洗浄に関する機密情報を暴露した有名なパナマ文書には載っていないが、2021年に明らかにされた同趣旨のパンドラ文書には記載されている。パンドラ文書はジャーナリストたちによってリークされたファイル群であり、これまで秘密にされてきたエリート層や超富裕層の財務状況を明らかにしている。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がタックスヘイブンファイルを大規模に公開したことで、90カ国以上、336人の政治家が所有する秘密のオフショア企業が明るみに出た。ゼレンスキーもその一人だ。

元コメディアンのゼレンスキーは、2019年4月、ウクライナの大統領に選出されたとき、旧ソ連の一部だった自国の汚職やオリガルヒと戦うことを公約にしていた。ウクライナでは当時、ペーパーカンパニーを使って国外に財産を隠すなど、政治家の腐敗に対する国民の怒りがあり、ゼレンスキーはその波に乗って大統領になった。

俳優だった頃の所得は

2021年10月に公開されたパンドラ文書では、ゼレンスキーとその側近が2012年に、オフショア企業のネットワークを構築したことが示されている。パンドラ文書によれば、ゼレンスキーとそのテレビ制作会社「第95街区」(KVARTAL 95)のパートナーたちは、数十億ドル規模の詐欺で告発されたオリガルヒ、イホール・コロモイスキーが所有するテレビ局のコンテンツを定期的に制作していたとき、オフショア企業を持っていたという。

ゼレンスキーが出演した番組で最も有名なのは、おそらく2015年に公開された「国民の僕(しもべ)」だろう。ゼレンスキーが演じるのは歴史教師。授業中に汚職を非難する姿を生徒が撮影し、その動画がオンラインで話題となり、大統領選挙に勝利する。予言的で象徴的だ。

だがパンドラ文書によれば、ゼレンスキーのパートナーたちが所有する2つのオフショア企業を使って、英国ロンドン中心部の高級物件が3つ購入されている。

また、ゼレンスキーは大統領選挙に勝利する数週間前、英国領バージン諸島に登記されているマルテックス・マルチキャピタル社の株式を、ビジネスパートナーのセルヒー・シェフィールに贈与している。シェフィールはその後、大統領首席補佐官になった。

しかし、パンドラ文書はさらに、大統領夫人のオレーナ・ゼレンシカが所有する会社にマルテックスの配当を支払い続けることができるよう、近い将来、手続きが行われることを示唆している。ただし、配当の実績やその規模は記されていない。配当の回数も不明だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中