最新記事

インドネシア

中国資本の工場でストから暴動 中国人とインドネシア人が対立、死者2名ほか多数が負傷

2023年1月17日(火)20時20分
大塚智彦
燃え上がる炎と労働者たち

インドネシアの中国資本の工場で起きた暴動の様子 Harian Kompas - YouTube

<背景には「民族」対立に加え労働者と会社経営側という「階層」の対立も──>

インドネシア・スラウェシ島にある中国資本のニッケル精錬工場で1月14日に労働争議が発生し、2人が死亡し多数が負傷。うち9人が重傷を負い病院で手当てを受けているという。

地元警察や軍が出動して治安は回復したものの警察は71人を拘束して捜査を進めている。

工場では多くの中国人労働者が働いており、警察はインドネシア人労働者と中国人労働者の対立が争議の背景にあるとみているほか、政府も事態を重視して近く関係者を現地に派遣するなど、徹底した真相解明を進める事態となっている。

現地からの報道などによると1月14日午前に中スラウェシ州東部北モロワリ県にある中国とインドネシアの合弁ニッケル精錬工場「ガンバスター・ニッケル・インダストリー社(GNI)」の労働者側の労働環境改善、安全対策徹底などを求める交渉が決裂し、労働者数百人がストライキに入った。

同日午後、スト参加の労働者が参加せずに働いている労働者に対してスト参加を呼びかけていたところなんらかの理由で騒乱状態に発展。スト参加者らが工場内の車両や重機などに次々と放火したり社員寮を破壊したりするなどの大規模な暴力行為に発展した。

この騒動でインドネシア人と中国人の労働者各1人が死亡した。

中国人との対立煽る動画も

事態を鎮静化するために警察官と軍人約550人が展開して事態は収拾し、精錬工場は16日に操業を再開している。

16日に首都ジャカルタで会見したリストヨ・シギット・プラボウォ国家警察長官によるとストライキに参加を呼びかける過程でインドネシア人労働者が中国人労働者に殴られたとの流言が伝わったことから騒乱になったとの情報があるとしている。

SNS上にはインドネシア人が中国人に殴打される動画がアップされているというが、警察では「民族間の対立を扇動する目的のフェイクニュースではないか」とみている。

騒乱の直接の原因について各種の情報が入り乱れているが、警察は「スト不参加者に参加を求める過程で対立が生じた可能性がもっとも高い」として拘束者71人の中の17人を破壊行為容疑の重要参考人として慎重に捜査していることを明らかにしている。

GNI精錬工場では過去1年間に爆発事故や重機の事故など死者がでる保安上のトラブルが起きており、労働者側が会社に対して安全確保、労働条件改善などを求める交渉を続けてきたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 9
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 10
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中