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米政治

トランプよ、黒人なら誰でもいいと思ったのか

The GOP’s Race Problem

2022年12月12日(月)18時20分
アダム・B・コールマン(著述家)
共和党候補ハーシェル・ウォーカー

ジョージア州の上院選決選投票で敗れた共和党候補のウォーカー(12月6日) ALYSSA POINTER-REUTERS

<ジョージア州上院選の決選投票で共和党候補が敗れたが、それは共和党の侮辱に黒人有権者がノーを突き付けたからだ。黒人の著述家、アダム・B・コールマンが寄稿>

米民主党の発言や信条は、アイデンティティー政治(ジェンダーや人種など特定のアイデンティティーに基づく集団の利益を代弁する政治)に偏りすぎている。筆者が民主党支持をやめた理由の1つはそれだった。

リベラリズム政党であるはずの同党は、私のような黒人有権者は「黒人だから」求めるものがあると見なし、人種本質主義政党になることを臆面もなく受け入れてしまった。

アイデンティティー政治は米政治制度に取りつく疫病だ。

左派だけでなく、共和党も感染するのは時間の問題だった。

11月の米中間選挙の上院議員選で決着がつかなかったジョージア州で、12月6日に行われた決選投票の結果、共和党候補ハーシェル・ウォーカーが敗北したのがいい例だ。

なぜ負けたのか、共和党は理解に苦しんでいるかもしれない。

だが、答えは単純だ。ドナルド・トランプ前米大統領が、左派流のアイデンティティー政治を採用したせいだ。

ウォーカーはトランプに熱心に請われ、居住地でなかった州で出馬した。

確かに2人は長らく親しい仲だが、トランプには友人が大勢いる。それなのに、特筆すべき職歴は「アメリカンフットボールの元スター選手」というだけの問題の多い人物を、なぜ上院議員として適任と考えたのか。

最大の理由は──ウォーカーが黒人だからだ。

ジョージア州では、黒人が住民の31%超を占める。人種に焦点を絞ったアイデンティティー政治に熱を入れる者にとって、候補者の肌の色は人柄や経歴より重要だ。

「人種政治」の初心者であるトランプは、黒人であればどんな候補でも、ジョージア州の黒人有権者に受けると思い込んだ。

これは、私たちへの侮辱であるだけではない。

黒人層の間には、黒人の共和党候補に対する明らかな軽蔑が存在する。黒人コミュニティーを懐柔するためにあてがわれたような候補なら、なおさらだ。

黒人票を獲得する方法

多くの黒人有権者は今も、共和党は人種差別的だとの見方を変える気にならない。平均的な共和党政治家よりメラニン色素が多い候補者であろうと、この「誤解」を捨てる根拠として十分ではない。

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