最新記事

東南アジア

ミャンマー裁判所、ジャーナリスト久保田氏に禁固10年の判決 拘束長期化か

2022年10月6日(木)14時48分
大塚智彦
禁固10年の判決が出された久保田氏の写真

禁固10年の判決が出された久保田氏の写真  Issei Kato-REUTERS

<拘束から2カ月、依然解放の目処はたたず──>

ミャンマーの裁判所は10月5日、中心都市ヤンゴンにあるインセン刑務所内の特設された法廷で日本人映像ジャーナリストの久保田徹氏(26歳)に対する公判を開き扇動罪で禁固3年、通信に関する罪で禁固7年の計禁固10年の実刑判決を下した。ミャンマーの司法当局は軍事政権の強い影響力の下にある。

ミャンマー国内の関係者からの情報などによると裁判所はさらに久保田氏に対する入管法違反容疑の裁判はなお継続中としており、今後さらに禁固刑が加算されることから、久保田氏の拘束は長期化することが懸念されている。

久保田氏は7月14日にミャンマーに観光ビザで入国。同30日にヤンゴン市内南ダゴン郡区で行われた反軍政を掲げる民主派による「フラッシュ・モブ」といわれるゲリラ的、短時間、少人数の抵抗デモの様子を撮影、取材中に近くにいた警察官に拘束、逮捕された。

この際、通訳、コーディネーターとみられるミャンマー人2人も同時に身柄を拘束されたが、この2人は現在も逮捕されたままで消息も明らかではないという。

久保田氏の逮捕容疑は、観光ビザでの取材活動が「資格外活動」に当たるとする入国管理法違反容疑と、刑法505条の「社会秩序を乱そうとする行為」に基づく扇動罪容疑、さらに通信に関する容疑とされ、8月16日には刑務所内の特別法廷で初公判が非公開で開かれた。

この通信に関する罪状が具体的に何を示すのか現段階では明らかではないが、久保田氏がミャンマー国内の少数イスラム教徒であるロヒンギャ族に関するドキュメンタリーを制作していたことと関係があるのではないか、と、見られている

日本からの度重なる早期釈放要求

2021年4月18日に治安当局により逮捕、訴追を受けたフリージャーナリスト北角祐樹氏は、収監中に日本からミャンマーを訪れた民間人や元政治家などによる「早期釈放要求」が受け入れられたためか、逮捕後約1カ月の5月14日に釈放され、国外退去処分で無事に日本に帰国している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中