zzzzz

最新記事

ロシア政治

プーチン政権の弱体化が始まった

Putin's Rule 'Weakening,' Preparation for Power Struggle Underway: Snyder

2022年7月25日(月)17時16分
ファトマ・ハレド

戦争がうまくいかず、「プーチンの次」を探る動きが始まった Sputnik/Aleksey Nikolskyi/Kremlin/REUTERS

<「プーチン後」の権力闘争に向けた動きが見られると専門家の分析>

米イェール大学のティモシー・スナイダー教授(歴史学)は7月23日、ツイッターへの投稿で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支配は「弱体化」しつつあり、来たるべき権力闘争に備えた動きが出ていると指摘した。

スナイダーはドミトリー・メドベージェフ前大統領らロシア政府の元高官の一部が、ウクライナと西側諸国に対し警告めいた発言をしていることを取り上げ、プーチンの「抑えが効かなくなっている」証拠だ、と述べた。

メドベージェフはプーチンの盟友だが、ロシアのウクライナ侵攻に対する欧米の対応によってウクライナが今残っている領土まで失い「世界地図から消える」かも知れないと警告した。

「こうした発言があると、危機感を煽るロシアのプロパガンダだと思うところだ。だが肝心なのは、メドベージェフらが自分たちもこうした発言をして構わないと感じ始めていることだ。侵攻前はこれほどではなかった」とスナイダーは述べた。

こうした脅迫めいたプロパガンダはプーチンへの忠誠心を示す一方で、「プーチン後の権力闘争」に向けた動きである可能性もあるという。

「ロシアが戦争に負けたら、今過激なことを言っている人々は自己保身に走るだろうが、私自身は、過激な発言はロシアの大物たちが自国の旗色が悪いと受け止めている証拠だと見ている」とスナイダーは述べた。

「プーチン後」を見すえたイメージ戦略

「メドベージェフはプーチンのリベラル寄りの交代要員と長年見られてきた人物で、彼がメッセージアプリのテレグラムで発信してきた反ユダヤ的、反ポーランド的、反欧米的なヘイトスピーチを本気で信じているとは思えない。(自身のテクノクラートという側面がかつて役に立ったように)そのうち役に立つかもしれない(タカ派という)側面を作っているのだ」とスナイダーは述べた。

またスナイダーによれば、プーチンの弱体化は、彼の立てた目標をロシア軍が達成できていないことからもうかがえる。同様の見方は一部の高官などからも聞かれる。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、プーチンがウクライナでの戦略的目標を達成するのに失敗したと述べた。

「プーチンは政敵や移ろいやすい世論、軍をうまくコントロールし、その均衡の上に居座ってきたが、今は費用ばかりかかって先の読めない戦争に脅かされている。プーチンはこれまでうまくわれわれを煙に巻いてきたが、今となっては彼自身が戦争という煙の中で迷子になっているようだ」とスナイダーは述べた。

【動画】珍しく待ちぼうけを食わされるプーチン

6月、スナイダーはロシアによる黒海封鎖がウクライナからの輸出穀物を妨げていると批判。難民を作り出すことでEUの不安定化を狙ったものだ、と述べていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウィーワーク、再建計画を裁判所が承認 破産法脱却

ビジネス

米インフレは2%目標へ、利下げ検討は時期尚早=ダラ

ワールド

金正恩氏、超大型多連装ロケット砲発射訓練を指導=朝

ビジネス

日鉄のUSスチール買収、米国以外の規制当局がすべて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカで増加中...導入企業が語った「効果と副作用」

  • 2

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 3

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程でクラスター弾搭載可能なATACMS

  • 4

    地球の水不足が深刻化...今世紀末までに世界人口の66…

  • 5

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き…

  • 6

    国立大学「学費3倍」値上げ議論の根本的な間違い...…

  • 7

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタ…

  • 10

    EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか?

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中