最新記事

メディア

ロシア、デジタル版「鉄のカーテン」で西側SNS遮断 市民は抜け道経由で信頼できる情報にアクセス

2022年3月28日(月)14時00分

グローバルなVPN運営企業に対してロシア向けに無料アクセスを提供するよう求める請願は、約3万5千筆の署名を集めた。

人権活動家は、暗号化されていない通信は、特に独立系のロシア人ジャーナリストや、侵攻を批判する人々にとって、逮捕や脅迫につながると指摘している。

そこで、メッセージの自動削除を設定する、あるいは定期的にメッセージやボイスメモを削除している人もいる。

もっとも、モナッシュ大学先端技術研究所のジェイサン・サドウスキー上級研究員によれば、VPNその他の迂回(うかい)ツールを使っても完全にファイアウォールを無効化することはできないし、常に信頼できるわけでもないという。

「こうしたサービスの効果はまちまちだし、かなり不安定になる場合もある。つまり、インターネットの制限にはやはり効果がある」と、サドウスキー氏はトムソン・ロイター財団に語った。

ロシアの動きによって、相互に接続できない、あるいは互換性のないテクノロジーを用いる国内・地域内のネットワークが多数存在する状態、いわゆる「スプリンターネット」が生じる懸念が高まっている。だがサドウスキー氏によれば、ロシアはすでに起こりつつあった変化を加速しているだけだという。

「この動きは、以前から『インターネットのバルカン化』とも呼ばれているが、インターネットのデジタル構造と物理的インフラの形成という点で、地政学がいかに重要な要因になっているかを露呈している」とサドウスキー氏。

「『スプリンターネット』はすでに多くの形で存在している。それをどのように経験するかは誰がどこにいるかによって変わってくるが」

規制回避のさまざまな手段

世界各国の政府はテクノロジー企業の統制を試みており、数多くの規制やファイアウォール、インターネット封鎖、ソーシャルメディアへの接続遮断によって、ニュースの流れに制限を設けようとしている。

中国やイラン、ロシアは長年にわたり、当局の統制能力を強める方向で民間の分散化されたネットワークに介入してきた。

エチオピア、ベネズエラ、イラク、インド、ミャンマーなどでは、ソーシャルメディアの遮断・機能停止が日常茶飯事であり、カンボジアは中国のような国家規模のゲートウェイ導入を予定している。

BBCや、ドイチェ・ヴェレなどグローバル規模の報道機関は、ロシア国民向けに、「トーア(Tor)」を使ってブロックされたウェブサイトにアクセスする方法を紹介するガイドラインを公表した。「トーア」は、複数のサーバーによるネットワークを経由することで接続経路を匿名化するソフトウエアである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ情勢、人質解放と停戦実現を心から歓迎=林官房長

ビジネス

サムスン電子、第3四半期は32%営業増益へ AI需

ワールド

パキスタンがアフガン国境で警戒強化、週末の衝突で数

ワールド

米にレアアース輸出規制事前通知、実務者協議も実施=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中