最新記事

核・ミサイル開発

北朝鮮、弾道ミサイル失敗は自国開発進む証拠? 

2022年3月22日(火)16時43分

失敗の少なさについて一部のアナリストは、北朝鮮が少なくとも当初はロシアなどの友好国に大きく技術依存していたことの証左だと指摘してきた。最初のICBMである「火星14」にも、イランとの協力から得た技術が用いられていると考えられている。

欧州を拠点とするミサイル専門家、マーカス・シラー氏は「完璧な開発などあり得ない。完璧に見える例があった場合には、多くの開発作業が既に他国で完了していたことが判明するのが常だ」と言う。「従って、その見地に立てば、発射失敗は真の自国開発を示唆するのかもしれない」

エンジンに問題か

北朝鮮は16日にどのミサイルを発射したかを明らかにしていない。同じ空港で行った2月27日と3月5日の発射実験についても同様だ。

同国はこれらの発射について、偵察衛星設備の実験が目的だったとしているが、米韓の高官らは、巨大な新ICBM「火星17」の秘密実験だと述べた。

「火星17を含む、より巨大で新型のミサイルに移行するにつれて失敗が増えるのは理にかなっている」とパンダ氏は言う。

もっともシラー氏は、16日に失敗したのが火星17の実験だったとすれば、最初と2番目の実験に失敗しなかったのは異例だと指摘する。実験の間隔が非常に短いのも、開発計画としては異例のことだという。技術者が設計を修正する時間がないからだ。

シラー氏は、「従って、最初の発射以前からミサイルは既に製造され、発射の準備が整っていたようだ。このことは、開発計画が既に試作品の製造段階より先に進んでいることを示唆するだろう」と分析。別の可能性としては「大きなリスクをとっていることの現れかもしれない」という。

ハンハム氏の見立てでは、ミサイルは打ち上げ直後に爆発したため、多段式の推進装置の1段目で起こった可能性が高い。火星17のケースでは、1段目には巨大で複雑なエンジン4基が使われている。

「北朝鮮は個々のエンジンの実験が成功したと喜んでいたが、火星17の1段目で4基を一緒に使うとは非常に大胆な挑戦だ」とハンハム氏は語った。

(Josh Smith記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・『イカゲーム』の悪夢が世界をここまで虜にする理由
・地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」対策が話題に
・韓国、保守に政権交代なら核兵器を配備する方針...米国は「関心なし」と専門家


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中