最新記事

韓国

新型コロナ以降、韓国が日本から輸入を増やしていた意外なものとは

2022年2月21日(月)16時45分
佐々木和義

韓国のプラスチック容器リサイクルセンター(2020年) REUTERS/Heo Ran

<新型コロナのパンデミックの長期化は、韓国で意外なものの輸入を増やしていた......>

新型コロナウイルス感染症の長期化で、韓国が日本から輸入している品目がある。プラスチックや紙などのリサイクルごみである。

韓国政府が飲食店やカフェの営業時間を制限し、会食など私的会合の人数を制限すると、消費者が出前や簡便食を求めるようになり、食品容器の需要が増えたのだ。

韓国は毎年6万トンから7万トンの廃棄プラスチックを輸入し、その40%から50%を日本から輸入してきた。中国が廃棄プラスチックの輸入を禁止した2018年、韓国政府はプラスチックゴミを減らす方針を掲げたが、翌19年は過去最高の16万トン、20年にも9万トンを輸入した。40%強が日本からの輸入である。

人口1人あたりごみ排出量は韓国が世界3位だった

韓国は世界有数のごみ排出国である。全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)が2021年12月1日に発表した「世界海洋プラスチックゴミに対する米国の役割評価」によると、2016年の人口1人あたりごみ排出量は韓国が世界3位だった。

最も多かったのは米国の130キロで、2位は英国の99キロ、3位は韓国の88キロで、以下、ドイツの81キロ、日本の38キロ、中国の16キロと続いている。

韓国で新型コロナが拡大した2020年に家庭から出された廃プラスチックは3065トンに達し、前年比17.7%増加した。グリーンピースによると、韓国の一般家庭が1週間に廃棄した使い捨てプラスチックは平均92個で、東亜日報はコロナパンデミックが「ゴミパンデミック」を引き起こしたと報じている。

使い捨てプラスチック容器の需要が急増した

2018年上期、ごみのリサイクルが社会問題となった。前年7月、中国がプラスチック、ビニール、繊維など24品目の資源ごみの輸入禁止を発表し、2018年1月から発効した。欧州各国は新たな輸出先を開拓したが、輸出先を見出せなかった韓国はごみが滞留し、回収業者がビニール製品や発泡スチロールの収集を拒絶する事態に陥った。

ソウル市などが、資源ごみを回収しないのは違法であるとして、洗ったビニールと白色の発泡スチロールを回収するよう指導したが、ペットボトルの回収を拒絶する業者も現れた。

韓国はプラスチック製品が溢れている。飲食店や家庭の食器はプラスチックが主流で、カフェで提供されるホットコーヒーは紙コップだが、アイスコーヒーなど冷たいドリンクはプラスチック製の使い捨てカップで提供されている。

また、水道水の安全性への懸念からペットボトルに入ったミネラルウォーターを買う人が少なくない。出前や弁当はプラスチック容器で、外装が豪華な過剰包装が好まれている。

韓国環境部は2018年8月、カフェ店内の使い捨てカップの利用を禁止した。テイクアウト客には従来通り使い捨てカップで提供できるが、店内で飲む客に使い捨てカップで提供すると罰金が科されることになった。
韓国のカフェで提供されるコーヒーは量が多く、飲み切れないコーヒーをマグカップごと持ち帰る客が続出したが、時間とともにマグカップやガラスコップが定着した。

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年8月、韓国政府は飲食店とカフェの営業制限を実施した。夜9時から朝5時まで食堂の店内飲食を禁止し、カフェ店内での料飲を禁止した。売上げが落ち込んだ多くの飲食店が出前代行会社と契約し、テレワークの拡大と相まって利用者が急増、コンビニエンスチェーンも弁当の充実をはかり、簡便に調理できるインスタント食品も増えていった。カフェは利用客との接触を減らすため、マグカップやガラスコップから使い捨てカップに切り替えた。使い捨てプラスチック容器の需要が急増したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中