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火山噴火1000年に1度のトンガ大噴火、これでは終わらない可能性
Why the Volcanic Eruption in Tonga Was So Violent, and What to Expect Next
トンガの火山噴火で上がった噴煙(1月14日) Tonga Geological Services/REUTERS
<なぜあんな大噴火になったのか、今後は何が起こるのか>
南太平洋に浮かぶ島々から成るトンガ王国はいつもなら世界の注目を集めるようなことはない。しかし1月15日に起きた海底火山の大噴火では、この島国で発生した文字どおりの衝撃波が地球の半分を揺るがした。
High-resolution Himawari satellite imagery of the #HungaTongaHungaHaapai volcanic eruption in Tonga
— NIWA Weather (@NiwaWeather) January 15, 2022
Our climate stations recorded a brief spike in air pressure as the atmospheric shock wave pulsed across New Zealand. pic.twitter.com/BfLzdq6i57
この海底火山も普段はいたっておとなしい。トンガの首都ヌクアロファから北へ65キロほど船で進むと、海抜100メートル程の2つの小さな無人島フンガハアパイとフンガトンガが海面に顔をのぞかせている。その下に眠るのが、高さ約1800メートル、幅20キロにも及ぶ巨大な海底火山だ。
筆者提供
島の名を合わせてフンガトンガ・フンガハアパイと呼ばれるこの火山は、ここ20年ほど何度か噴火を繰り返してきた。2009年と2014〜15年の噴火でも熱いマグマと蒸気が海上に噴出したが、今回の噴火はそれらよりはるかに大規模だった。
私たちが行ったこれまでの噴火の調査から、今回の噴火はざっと1000年に1度の大噴火と考えられる。
超音速の爆風が発生
海底火山の噴火では、マグマが海水に冷やされるはずなのに、なぜこれほど激しい爆発が起きたのか。
マグマがゆっくりと上昇すれば、たとえ約1200℃の高温であっても、マグマと海水の間に蒸気の薄い層ができて、これが断熱材となり、マグマの外側の表面が冷やされる。
だが地下に火山ガスがたまり、マグマが一気に噴出すると、この仕組みは働かない。マグマが急激に海中に噴き出すと、蒸気の層は吹き飛ばされ、高温のマグマが冷たい海水にじかに触れる。それにより海水が瞬時に気化して、体積が一気に増大し、水蒸気爆発が起きるのだ。
これは火山研究者が「燃料と冷却材の相互作用」と呼ぶ現象だ。極めて激しい爆発により、マグマの外側が吹き飛ばされると、内部のマグマが海水に触れて、さらなる爆発が起きる。このようにして連鎖的に爆発が繰り返され、ついには火山性粒子が大量に噴出し、超音速の爆風が発生する。
海底に眠る巨大カルデラ
2014〜15年の噴火で火山円錐丘が形成され、フンガトンガとフンガハアパイを結ぶ長さ5キロの島が誕生した。私たちは2016年にこの島を調査し、これまでの噴火は序章にすぎず、はるかに大規模な噴火がこれから起きると予想した。
海底地形の調査で、海面下150メートルに眠るカルデラが見つかった。
筆者提供
このカルデラはクレーターのような窪地で、直径約5キロ。2009年、2014〜15年の噴火など、小規模の噴火は主にこのカルデラの周縁で起きるが、大規模噴火はカルデラそのものから発生する。大規模噴火では、噴出するマグマの頂部が内側に崩れ落ち、カルデラはさらに深く穿たれる。
小規模の噴火は地下にマグマがゆっくりとたまり続け、大規模な噴火を準備していることを示す兆候だ──過去の噴火の痕跡の化学組成を調べて、私たちはそう考えるようになった。
遠い過去の大噴火の痕跡
フンガトンガとフンガハアパイの堆積層から、フンガ・カルデラで過去に起きた2度の大規模噴火の痕跡が見つかった。私たちはその化学組成が、トンガ王国の首都がある65キロ先の本島・トンガタプ島に堆積した火山灰の化学組成と同じであることを突き止め、放射性炭素年代測定で大規模噴火が起きた年代を調べた。その結果、カルデラの大規模噴火は、およそ1000年に1度の周期で発生していて、前回は1100年に起きたことが分かった。
これに照らせば、今回の噴火は1000年に1度の大噴火と見てよさそうだ。
今はまだ一連の大規模な火山活動のさなかにあり、噴煙で島が覆われていることもあって、不明な事柄が多い。
2021年12月20日と2022年1月13日に起きた2度の噴火は中くらいの規模だった。噴煙が17キロの高さに立ち上り、2014〜15年の噴火でできた島が拡大した。
目覚めたフンガ・カルデラ
1月15日の噴火はそれらを上回る規模で、噴煙は高さ約20キロまで上がった。最も注目すべきは、噴煙が火山を中心に半径130キロの同心円状に広がったことだ。その後、噴煙は風に流されて形を変えた。
この噴煙の規模は、凄まじい爆発力を物語っている。その威力はマグマと海水の相互作用だけでは説明できない。ガスが充填した新しいマグマがカルデラから大量に噴出したと考えられる。
この噴火で、トンガの全ての島々、そして近隣のフィジーとサモアの島々も津波に襲われた。衝撃波は何千キロも伝わり、衛星からも観測され、およそ2000キロ離れたニュージーランドでも記録された。トンガタプ島では、噴火後まもなく空が真っ暗になり、火山灰が降り始めた。
これら全ての兆候は、巨大なフンガ・カルデラが目覚めたことを物語っている。津波は大気中と海中を伝わる衝撃波が合わさって起きるが、海底で発生した地滑りやカルデラの崩壊によっても起きる。
Changes of Hunga Tonga - Hunga Ha'apai volcanic #island caused by recent eruption. #Radar images taken by #Sentinel1 satellite on Dec. 10 and Dec. 22.
— kosmi (@kosmi64833127) December 23, 2021
Satellite data processeda in @sentinel_hub#Tonga #volcano #HungaTongaHungaHaapai #SAR pic.twitter.com/TNxzxRJ3Ov
今回の噴火が一連の火山活動のピークかどうかはまだ分からない。マグマの圧力が大幅に放出されたのは確かで、それにより噴火が収まる可能性もある。
ただ、堆積層に残る過去の大噴火の痕跡を調べると、1000年に1度の大規模なカルデラ噴火は、複雑な連続的プロセスで、いくつもの噴火が別々に起きたと考えられる。
そのため私たちは、この海底火山では今後数週間、いや、ひょっとすると数年にわたって大規模な活動が続くこともあり得ると予想している。トンガの人々のために、この予想が外れることを祈っている。
Shane Cronin, Professor of Earth Sciences, University of Auckland
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.