最新記事

オミクロン株

アメリカはなぜオミクロン株の抑制に失敗したか

Why U.S. Failed to Control Delta and Omicron, Now Dominant Variant

2021年12月22日(水)17時34分
エド・ブラウン
NY証取とマスクの男性

新型コロナウイルスとの戦いで敗戦を繰り返すアメリカ Andrew Kelly‐REUTERS

<アメリカでオミクロン株の感染が激増し、あっというまに支配的になったのは、デルタ株のときと同様に米政府の対応の遅れとワクチン頼みの姿勢にある>

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」は、アメリカでもたちまち支配的になった。疾病対策センター(CDC)が、確認された新規の症例の73.2%を占めていることを明らかにした。

オミクロン株の台頭は実に速かった。アメリカで初めて感染者が確認されたのは12月1日で、11月22日に南アフリカから帰国した旅行者だった。

もっとも、アメリカに最初にオミクロン株が到達した正確な時期は明らかではない。CDCは11月15日の時点でそれと疑われる症状を報告していたが、その前からアメリカに存在していた可能性もある。

いずれにせよ、ここまでの入手可能なデータは、オミクロン株が非常に感染力の高い変異株であることを示している。

オミクロン株が主流になるまでの数カ月、アメリカの新規感染の圧倒的多数を占めていた変異株、デルタ株の場合も同じだった。どちらも到達した国ですぐに支配的になった。

コロンビア大学医療センターの疫学教授で、感染症疫学証明書プログラムのディレクターを務めているスティーブン・モースは、その理由を説明した。

「基本的には、全世界がデルタ株の封じ込めに失敗したということだと思う」と、彼は本誌に語った。「デルタ株は、予想外に感染力が強かったため、検査とウイルス対策の穴をすりぬけてしまった。優れた検査体制があっても、デルタ株やオミクロン株のように感染拡大が速いウイルスに追いつくのは難しいだろう」

対策はその場しのぎ

「パンデミック全体で起きていることだが、ウイルスの変種が特定されるころには、発生源とみられる地点をとっくに越えて広がっている」とモースは言う。

スタンフォード大学医学部の教授ジョシュア・サロモン教授(健康政策)は、アメリカはデルタ株への対応が遅すぎたし、対策も弱すぎたと考えている。

「政府のメッセージと政策は比較的弱く、混乱したものになった。デルタ株の急増に対しては準備段階でもっと周到に対応し、その後の対策もより積極的にする必要があったのだが」と、サロモンは言う。

サロモンによると、デルタ株とオミクロン株に対する対策の類似点のひとつは、ほとんどワクチン頼りだったということだ。

デルタ株への対応はワクチン接種にほぼ依存していたし、オミクロン株ではブースター接種にいちかばちかの賭けをしている。

「ブースターを含むワクチン接種だけでオミクロン株の大規模な感染拡大を封じ込めることができる可能性は非常に低いと私は思う。だがこれまでのところ、米政府はマスク着用や検査体制、行動制限などのかなりの部分を、州や地方自治体の保健当局などの裁量に任せてしまっている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

伊プラダ、さらなる買収検討の可能性 アルマーニに関

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と21日会談 ホワ

ワールド

マクロスコープ:日中関係悪化、広がるレアアース懸念

ワールド

アジアのハイテク株急伸、エヌビディア決算でAIバブ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中