最新記事

生物

半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてなお泳ぎ続ける:動画

2021年11月29日(月)14時54分
青葉やまと

過去にはフロリダでも

サメの共食いに関する過去の事例としては、2019年に米フロリダ州マイアミ沖にて、偶然居合わせた釣り人たちが捕食の瞬間を撮影している。

小型のサメが海面付近を泳いでいたところ、背後から大型のサメが忍び寄り、尾ビレに噛み付くとそのまま食いちぎって切断した。襲われたサメはもがき、尾の切断面から海面に鮮血を流している。映像とともにサン紙が報じた。

釣り人たちの一行は当時、人気の高い大型魚の一種であるターポンを狙ってモーターボートを駆り出していた。うち一人の女性に引きがあり、ターポンがかかったものと思い込んでいたが、実は小型のサメが餌に食いついていたという。身動きが取れなくなったところを大型のサメに察知され、隙を突かれた形だ。

3億年前から続く共食いの歴史

観察例が比較的少ないとはいえ、サメの共食いは例外的な行為ではない。オーストラリア海洋学者協会のミーカン博士はサン紙に対し、「ある悪質なサメがほかのサメを襲うということではなく、特定の種のサメがほかを攻撃するというわけでもありません。多数のサメ同士が互いを狙いあっているのです」と説明する。

カリフォルニアでの一件からもわかるように、窮地にあるサメはとくに狙われやすい。オーストラリアの一部では遊泳客への安全措置として、サメ避けの防護ネットと釣り針を設置している。餌につられたサメが針に食いつくことがあるが、このように釣り針にかかってしまったサメは、ほかの個体の格好の餌食となる。

共食いの習慣はいまに始まったことではなく、古代にすでにあったという証拠が化石に刻まれている。サメの祖先であり古代ザメとして知られるオルタカントゥスの化石からは、ほかのサメの幼魚の歯が発見された。これをもとにデイリー・メール紙は、サメの共食いの習慣は少なくとも3億年前には存在したと解説している。

大洋の強者であるサメとはいえ、その地位は決して安泰ではないようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、領土交換はウクライナに決めさせる 首脳

ビジネス

中国人民銀行、物価の適度な回復を重要検討事項に

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中