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給与所得

日本はフルタイムで働いても「普通の生活」が出来ない国

2021年10月27日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

<表1>の分布から中央値を算出し、棒グラフにすると<図1>のようになる。

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男性の正規を除いて、どのグループも300万円に届かない。女性の非正規は204万円、フリーランスに至っては138万円という惨状だ。「1日8~9時間働いて、これはない」と言わざるを得ない。なお『就業構造基本調査』でいう所得とは税引き前なので、手取りはもっと少ないことになる。

これでいて、税金や住居費(家賃)等の基礎生活費は増えているのだから、国民の生活は実に苦しい。一方、企業の内部留保は過去最高と聞く。ある大手企業の社長が言っているが、こういう時期こそ内部留保を取り崩し、従業員に還元すべきだ。ここまで給与が安いと国民の購買力が下がり、モノが売れなくなる。海外からも労働力が来なくなる。商品を売る、必要な労働力を確保する、という2つの面で痛手を被ることになる。要するに、自分たちに返ってくるわけだ。

普通に働けば普通の暮らしができる社会、もっと具体的に言えば「1日8時間の労働で、普通の暮らしができる社会」の実現が望まれる。選挙の公約でよく聞くが、日本の現状は程遠く、時代と共に遠ざかってすらいる。

間もなく衆院選が実施されるが、選ばれた為政者は、上記のスローガンを確実に実現する政策をとって欲しい。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)

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