最新記事

中国

「羊毛は羊の体に生える」と「バラマキ」を戒める中国――日本の「成長と分配」は?

2021年10月25日(月)09時12分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国では、中国共産党あるいは政府の言いにくいことや、それとなく表現したいことを、往々にして環球時報の編集長やお抱え学者に書かせたりすることが多いので、これは中国政府の基本的な姿勢だと考えていいだろう。

米中日の政府債務とGDPの推移

では、「国の借金」すなわち「政府の債務」とGDP(国内総生産)との関係に関して、環球時報編集長が例に挙げていたアメリカと中国自身および我が日本の推移を比較してみよう。以下に示すのは「米中日の政府債務とGDP推移」である。データはIMF(国際通貨基金)に基づいた。

図1:米中日政府債務とGDP推移

endo20211024130701.jpg
出典:IMFデータに基づき筆者作成

図1で実践はGDPの値で、破線は政府債務である。

青はアメリカ、赤は中国、緑は日本を示す。

図1から明らかなように、中国のGDPは2010年に日本を抜き、日本は2011年と12年にわずかに増加したものの、その後はひたすら低迷し、アベノミクスはまったく日本経済を成長させていないことが見て取れる。

この、わずかではあるがGDPが成長した時期は、実は民主党政権時代だった(正確には2009年9月から2010年5月まで民主党と社会民主党&国民新党との連立、それ以降は民主党・国民新党の連立)。

2012年12月に安倍政権時代(自民党と公明党の連立)になった瞬間からGDPは下がり始めている。

もちろん2011年には東日本大震災と原発事故があったので緊急財政出動をしなければならなかっただろうし、GDPが安倍政権に入ってから下がり始めたのもその時点では理解できる。

しかし安倍政権が始まり、アベノミクスで経済を再生させると意気軒昂だった割に、GDPは8年以上にわたり、ひたすら低迷したままだというのは喜ばしいことではない。

だというのに、日本政府の債務はGDPを大きく上回り、GDPとの差を広げるばかりだ。

民主党政権の肩を持つつもりはさらさらないが、しかし原発事故は地震によるもので、しかも何十年にもわたって「原発は安全だ!」と強烈に叫び続けて「安全神話」を創り上げてきたのは自民党であり自公政権ではないのか。

「あの悪夢の民主党政権!」と叫ぶのは、少なくとも原発事故に関しては、少々無理があるかもしれない。

ところで中国の場合を見てみると、GDPの方が政府債務を上回っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-ダイムラー・トラック、米関税で数億ユーロの損

ビジネス

トランプ政権、肥満治療薬を試験的に公的医療保険の対

ビジネス

パウエル氏利下げ拒否なら理事会が主導権を、トランプ

ワールド

カンボジア、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中