最新記事

宇宙開発

「まずは私たちの惑星を救おう」──宇宙旅行に熱心な億万長者に否定的な声多数

2021年8月2日(月)17時10分
松丸さとみ

宇宙事業に取り組む理由は、気候変動から人々を救うため?  REUTERS/Joe Skipper, Virgin Galactic

<宇宙空間へと旅立ったブランソン氏とベゾス氏。先を競うように宇宙旅行をする億万長者に対して、否定的な声も少なくない>

先を競うように宇宙へ向かった2人の億万長者

今年7月、2人の億万長者が先を競うように宇宙へと旅立った。しかしそのはしゃぐ姿をよそに、「宇宙開発の前に地球の危機に目を向けるべき」「ロケット発射で地球環境が破壊されるのでは?」といった懸念の声も上がっている。

米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は6月7日、自身のインスタグラム・アカウントで、宇宙旅行の計画を明らかにした。「5歳の頃から、宇宙旅行を夢見ていた。7月20日に、弟を連れてその旅に出る」と投稿したのだ。米フォーブス誌は、「ベゾス氏、初の"宇宙億万長者"に」と報じた。

ところが間もなく、ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏が、ベゾス氏よりも9日早く、「初の宇宙億万長者」となることが明らかになった。同氏が立ち上げた宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックが7月1日、飛行機型の宇宙船「スペースシップ2・ユニティ」による試験飛行(同社4度目の有人飛行)を7月11日に実施すると発表。この際に、ブランソン氏自らが搭乗することになったというのだ。

ブランソン氏は旅行前、米ワシントンポスト(7月1日付)とのインタビューで、11日に宇宙へ行くと決めた理由について、20日と公表していたベゾス氏を打ち負かそうとしたわけではないと述べ、「同じ月に宇宙へ行くのは、信じられないような、素晴らしい偶然に過ぎない」と話していた。

かくして7月11日、宇宙に向かったブランソン氏は、無重力状態になった機内から地球を見下ろしつつ、感動を次のように言葉にした。「私はかつて、星を見上げながら夢を見ていた子どもだったが、今や宇宙船に乗って美しい地球を見下ろす大人になった」。

続いて20日、ベゾス氏は自身が立ち上げた宇宙企業ブルーオリジンによる初の有人飛行として、弟のマーク・ベゾス氏など計4人で、ロケット「ニューシェパード」に乗って宇宙旅行へと向かった。

宇宙レースの加速は必至

ブランソン氏と2人のパイロット、ヴァージン・ギャラクティックの社員3人の計6人を乗せたユニティが向かったのは、高度85キロほどの場所だったと言われている。地上を離れてから再び地球に戻ってくるまでに要した時間は約1時間だった。

一方でベゾス氏を乗せたニューシェパードは、高度106キロまで達したが、テイクオフからランディングまでは11分間で、宇宙空間にいたのは約4分間だった。

「どこからが宇宙か」については、世界的に共通の見解が存在しないため、さまざまな定義がある。アメリカ海洋大気庁の環境衛星データ情報局によると、米軍および米航空宇宙局(NASA)は、地表から50マイル(約80キロ)からを宇宙と定義する。また、国際航空連盟(FAI)は海抜高度100キロをカーマン・ラインと呼び、ここから先が宇宙だとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働市場にリスク、一段の利下げ正当化=フィラデル

ワールド

トランプ氏やエジプトなどの仲介国、ガザ停戦に関する

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏と17日会談 トマホーク

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦でエジプトの役割を称賛 和平実
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中