最新記事

中国

建党100年、習近平の狙い──毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」

2021年6月25日(金)12時25分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

7月1日には建党百周年を迎える中共中央総書記・習近平  Aly Song-REUTERS

建党100周年と米中覇権の分岐点に遭遇した習近平は、そのタイミングを最大限に利用して、毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」という二つの「新」に中国を区分し、一党支配体制の維持と対米勝利を狙っている。「父を破滅に追いやった鄧小平を乗り越える」結果が付随するのが、内心の狙いでもあろう。

「新中国」を建設した毛沢東

1949年10月1日に毛沢東が天安門の楼上で「中華人民共和国」誕生の宣言をした時には「今天、中華人民共和国成立了!(今日、中華人民共和国が成立した!)」と表現した。

天地に鳴り響き、大地を揺らさんばかりの熱狂が全中国を包んだ。

このとき人民は「中華人民共和国万歳!」とは叫ばなかった。叫んだのは、

  新中国万歳!

  毛主席万歳!

  中国共産党万歳!

  中国人民解放軍万歳!

である。

なぜなら、新しい国名に関して、「中華人民共和国」とするのか、それとも「中華人民民主共和国」にするか、はたまた「中華人民民主国」にする方がいいかなど、多種多様な意見が出ていたからである。

6月21日のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>にも書いたように、毛沢東は「新民主主義」を唱えていたので、建国当時は多党制で、現在の政治協商会議に相当するものが政府を構成していた。

それくらい「民主」にこだわったために、必ずしも「中華人民共和国」という国家の呼称が行き渡らず、誰もが「新中国」と熱狂的に叫んだ。私の頭の中にも「新中国」という「音」が浸み込んでいる。

別の角度から見れば、中国が言うところの「民主」が何を意味しているか、特に香港問題などに関しては、この「言葉の定義」に騙されてはいけない。

憲法に書き込んだ習近平の「新時代」

それはさておき、習近平は2017年10月に開催された第19回党大会で「習近平の新時代中国特色ある社会主義思想」を唱え、党規約に書き込んだだけでなく2018年3月に開催された全国人民代表大会で憲法改正を行い、憲法にも書き込んだ。

この「新時代」「新中国」と「対」を成すもので、

毛沢東――新中国

習近平――新時代

と、中国という国家、あるいは中国共産党の歩みを「毛沢東と習近平」によって二つに分類するという考え方に基づく。

だから、上記のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>に書いたように、中国共産党歴史展覧館の第一部分と第二部分が毛沢東で、第四部分とこれからの「10年あまり?」は習近平によって描かれるという道筋になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米大手銀、最優遇貸出金利引き下げ FRB利下げ受け

ワールド

ポーランド家屋被害、ロシアのドローン狙った自国ミサ

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け不安定な展開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中