最新記事

中東

イスラエル空爆によるガザ地区の死者は、ハマスのロケット弾攻撃による過去25年間の死者を上回る

Israeli Airstrikes on Gaza Killed More This Week Than Hamas Rockets Have in 20 Years

2021年5月17日(月)18時00分
ダニヤ・ハジャジ
イスラエル軍による空爆で破壊されたガザ地区のビル

5月15日、イスラエル軍による空爆で、ガザ地区にあるAP通信やアルジャジーラが入るビルが破壊された Ashraf Abu Amrah-REUTERS

<死者数の大きな差が示すイスラエル対パレスチナの戦いの非対称性と、それを正当化するイスラエルの多彩な理屈>

先週のパレスチナ自治区ガザ地区へのイスラエルの空爆による死者は、ガザ地区を実効支配するイスラム系過激派組織「ハマス」のロケット弾による過去20年間のイスラエル側の死者を上回っている。

死者数のこの大きな差は、被害者は自分たちだというパレスチナ側の主張の説得力を強めるとともに、イスラエルに自制を求める世界からの声が高まる理由にもなっている。

パレスチナ側はこれまでも、犠牲者が多いのはイスラエルの武力行使があまりに行きすぎている証拠だと訴えてきた。一方イスラエルは、自国の防空能力が優勢でなければパレスチナ民兵の攻撃による犠牲者は実際よりはるかに多くなっていただろうと主張。また、パレスチナ民兵が身を隠すため、また宣伝のために故意に一般市民の中に紛れていると非難している。

イスラエル側のデータによれば、2000年から昨年までに、ガザ地区のパレスチナ人によるロケット弾攻撃で死亡したイスラエルの民間人は38人。一方、パレスチナ側は、今月10日から14日までにイスラエル軍の攻撃で122人のパレスチナ人が死亡したと主張している(パレスチナ側は一般市民と民兵を分けた数字を出していない)。

イスラエル外務省はウェブサイトで、2000年9月27日から今月5日までの「パレスチナによる暴力の犠牲者」リストを公開。本誌が調べたところ、このうちハマスの発射したロケット弾と関連して死亡したとされていたのは少なくとも16人(子供4人を含む)だった。

外国人労働者も巻き込まれ......

16人のうち12人が民間人で、2人はイスラエル軍関係者、2人は外国人労働者だった。ハマスが行ったとされる16回の攻撃のうち、15回はハマスが犯行声明を出している。

一度に30人の死者を出したパレスチナ側のロケット弾攻撃については、どの組織が行ったか明示されてはいないが、外務省は死者のうち約6人についてハマスが製造したロケット弾「カッサム」で死亡したとしている。また、少なくとも16人の死はガザ地区から打ち込まれた飛翔体と関連があるとされている。

04年にはガザ地区内にあったユダヤ人入植地(現在は解体されている)で、24歳の女性が何者かが撃った迫撃砲によって死亡している。

リストにはハマス以外のパレスチナ人組織のロケット弾攻撃による死者も含まれている。そのうちいくつかは、イスラム聖戦機構が犯行声明を出したものだ。少なくとも5人のイスラエル軍兵士を死に至らしめた携行式ロケット弾(RPG)の攻撃も、ガザ地区で働いていた中国人1人とパレスチナ人2人がカッサムロケットにより死亡した事件も、しかりだ。10年にタイ人労働者が1人、やはりカッサムロケットで死亡したが、これについてはファタハの軍事部門であるアルアクサ殉教者団やイスラム武装組織アンサール・アルスンナが犯行声明を出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

ウクライナ南部オデーサに無人機攻撃、2人死亡・15

ビジネス

見通し実現なら利上げ、不確実性高く2%実現の確度で

ワールド

米下院、カリフォルニア州の環境規制承認取り消し法案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中