最新記事

中東

イスラエル空爆によるガザ地区の死者は、ハマスのロケット弾攻撃による過去25年間の死者を上回る

Israeli Airstrikes on Gaza Killed More This Week Than Hamas Rockets Have in 20 Years

2021年5月17日(月)18時00分
ダニヤ・ハジャジ

今回の外務省のリストには、08〜14年のガザ地区での武力衝突で死亡したイスラエル軍兵士は含まれていない。

14日、パレスチナの保健省は、ガザ地区に対するイスラエル軍の空爆で10日以降、子供31人を含む122人のパレスチナ人が死亡したと発表。8世帯26人が殺されるなど、家族ぐるみでイスラエルの爆撃の「標的」にされた例も複数あると述べた。

パレスチナ保健省は10日、20人が死亡したと発表している。つまり、その後のたったの4日間で102人が死亡した計算だ(編集部注:報道によれば、ガザでは16日、イスラエル軍の空爆により、1日当たりで最多となる子供10人を含む42人の死亡が確認された)。

AP通信はハマスやイスラム聖戦機構が、少なくとも20人の構成員の死亡を認めたと伝えた。だがイスラエル軍は、パレスチナ過激派の死者は100人を超えるとしている。

イスラエル軍によれば、ハマスとイスラム聖戦機構はイスラエルに向けて1750発を超えるロケット弾を発射、イスラエル人の民間人7人が死亡したという。12日にはガザ地区から発射されたロケット弾が住宅に命中、6歳の子供が死亡したという。

イスラエル軍はまた、パレスチナ側の死者が多い理由について、イスラム系過激派が故意に民間人の命を危険にさらしているからだと主張している。

「彼らが10日以降に発射した1750発を超えるロケット弾のうち、300発は不発弾でガザ地区内で爆発、罪のない周辺住民を殺傷した」とイスラエル軍は主張している。「これはハマスとイスラム聖戦機構が故意に、ロケット弾の発射装置や軍事拠点を民間人の暮らすガザ地区内の人口密度の高いエリアに配置したためだ」

病院周辺を狙い撃ちした「戦争犯罪」

またイスラエル軍は、ガザの住民に避難を呼びかけてもハマスやイスラム聖戦機構が出て行かないように人々を説得しているとした。

「だがイスラエルにおいては、軍は民間人を守るため打てる手はすべて打っている。そして『アイアンドーム』対空防衛システムは、イスラエルに向けて発射されたロケット弾のうち90%超の迎撃に成功している」とイスラエル軍は主張する。

一方でパレスチナ保健省は、イスラエル軍がガザ地区内でも「人口密度の高い住宅エリア」を狙っていると非難した。

「民間人を脅し、自宅から避難所へと追いやることで、新型コロナウイルスの感染拡大の危険な環境ができてしまう。そして、ただでさえ疲弊したガザの医療システムへの負担がさらに増加する」と保健省は指摘した。

「道路インフラや医療センター周辺を直接の標的とすることは戦争犯罪とされている。こうした行為によって医療チームは患者を診ることができなくなり、患者の医療センターへのアクセスが妨げられる」

また保健省によれば、イスラエルはガザ地区の医療機関に電力を供給していた発電所向けの燃料の輸入を停止したという。これにより、手術室や集中治療室(ICU)といった「命に関わる部門」に影響が出ているという。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中