最新記事

サイエンス

670万種の種子や胞子、精子、卵を月で保管する「月の方舟」構想が明らかに

2021年3月19日(金)17時50分
松岡由希子

月の地下にある溶岩洞に、地球上の生命体を半永久的に保管する構想...... photo-NASA

<気候変動や自然災害、核戦争、天体衝突など脅威に備え、地球上の生命体を月で半永久的に保管する「月の方舟」構想が明らかとなった...... >

「ノアの方舟」とは、旧約聖書に記された大洪水にまつわる物語で、主人公のノアとその家族、様々な動物をのせた方舟をいう。このほど、気候変動や自然災害、核戦争、天体衝突など脅威に備え、地球上の生命体を月で半永久的に保管する「月の方舟」構想が明らかとなった。

生物670万種の精子・卵子・種子・DNAサンプルを月で保存する

米アリゾナ大学のジェカン・サンガ准教授らの研究チームは、2021年3月12日、米国電気電子学会(IEEE)の国際航空宇宙会議で、動物130万種、植物30万種、菌類510万種の計670万種を対象に、その種子、胞子、精子、卵、DNAのサンプル各50個を極低温凍結し、月の溶岩洞内で保管する「月の方舟」構想を発表した。すべてのサンプルを月に輸送するためには、約250回のロケットの打ち上げが必要だ。

mautoka20210319bb.jpg

月の溶岩洞内に「月の方舟」を作る構想 Jekan Thanga

日本の月周回衛星「かぐや」が2009年に火山地域の地下で複数の溶岩洞を観測するなど、21世紀に入ってから、月の地下で約200の溶岩洞が発見されている。

これらは、溶岩流が溶けて地下の軟岩を押し分けながら流れた際に形成されたもので、推定30〜40億年間、手つかずであることから、太陽放射や微小隕石、地表の温度変化から保護する「シェルター」として活用できるのではないかとみられている。

呼吸に適した空気も水もなく、約マイナス25度であるため、人間が長期にわたって快適に滞在できる環境ではないが、サンプルを低温のままで安定的に保管する場所としては適している。

Lava Tubes: Science Beneath the Surface of the Moon
今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中