最新記事

アメリカ政治

「トランプ共和党」はこれからも続くか 弾劾無罪評決で党内にジレンマ

2021年2月18日(木)10時13分

こうした党内の亀裂が引き金になって、保守派の間では共和党がどれだけ右傾すべきかを巡って公然と議論が巻き起こっている。トランプ氏が台頭し大統領に当選する中で重要な役割を担ったフォックス・ニュースでは、フォックス社のマードック最高経営責任者(CEO)がつい最近、同社投資家に対し、フォックスは中道右派の立場を守っていくと表明した。

フォックスが大統領選挙の開票速報でアリゾナ州でのトランプ氏の敗北をいち早く、結果的にも正確に打ったことで、同氏はフォックスを激しく非難。もっと右寄りの動画メディアが不満だらけなトランプ支持者を引きつける機会を作り出した。

しかしマードック氏は「われわれはさらに右寄りになる必要はない」と断言。「われわれは米国が一段と右傾しているとは思わないし、われわれが左寄りに軸足を置くつもりもないのも明白だ。」と語った。

愛国者の「新党」構想も

元共和党幹部ら数十人は党がトランプ氏に対抗しないことに失望し、新たな中道右派政党を立ち上げることを協議した。ただ、複数の共和党議員はこの構想を否定している。

トランプ氏の側近によると同氏自身も新党・愛国者党を作ることを話しており、そうした動きはさらに共和党内の分裂を悪化させている。

トランプ氏は当面は共和党を左右し続ける。しかし、弾劾裁判に際して幾人かの共和党上院議員は、議事堂襲撃やトランプ氏が選挙不正を何か月も言い立てたことで残る汚点は、24年の大統領選再選の可能性を損なうとみている。

弾劾裁判で有罪に賛成した共和党のリサ・マカウスキ上院議員は記者団に、「ここ議事堂で起きた全容が米国民に明かされた後に、トランプ氏が大統領に再選され得るとは思わない」と述べた。

トランプ氏が既に大統領を退任し、お気に入りの発信手段だったツイッターへのアクセスも阻止されていることで、新たな問題や人材が浮上してくるにつれてトランプ氏の党への支配力は弱まる可能性があるとみる共和党議員も何人かいる。

トランプ氏の盟友であるジョン・コーニン上院議員は、トランプ氏の大統領としての遺産は恒久的に打撃を受けたと話す。「トランプ氏は多くの素晴らしいことをしたのに、不幸にも昨年の大統領選後の彼の振るまいや対応のほうが後世に記憶されようとしている」とも指摘。「これは悲劇だと思う」と語った。

(John Whitesides記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・さようならトランプ、負債3億ドルと数々の訴訟、捜査が待っている
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マラウイ副大統領の搭乗機が消息絶つ、捜索継続

ワールド

インド新政権、シタラマン財務相ら主要閣僚留任

ワールド

仏総選挙、極右優勢も過半数届かない公算 与党連合半

ワールド

欧州委委員長が続投へ「支持固め」開始、右派躍進の欧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬で決着 「圧倒的勝者」はどっち?

  • 4

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「私の心の王」...ヨルダン・ラーニア王妃が最愛の夫…

  • 7

    高さ27mの断崖から身一つでダイブ 「命知らずの超人…

  • 8

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    公園で子供を遊ばせていた母親が「危険すぎる瞬間」…

  • 10

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 7

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 10

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中