最新記事

中国

「習近平vs.李克強の権力闘争」という夢物語_その2

2020年9月1日(火)18時31分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

習近平国家主席と李克強国務院総理(首相)(2018年3月3日) Jason Lee-REUTERS

習近平と李克強が権力闘争をしているという主張は、中国政治の仕組みや真相を知らないチャイナ・ウォッチャーによって次から次へと新しく捏造されていくので、日本の国益のために歯止めをかけなければならない。

ここでは「習近平vs.李克強の権力闘争」という夢物語_その1でお約束した通り、「その1」の後半部分として、「3と4」に関してご説明する。

3.習近平主催の企業家座談会に李克強がいなかったことについて

今年7月21日に習近平国家主席が主催した企業家座談会に李克強国務院総理(首相)は出席していなかった。この座談会には9人の企業家や専門家らが出席し、また汪洋や韓正など一部の中共中央政治局常務委員が同席している。

日本の一部のチャイナ・ウォッチャーは、これを以て、「習近平による李克強外しが決定的となった」と燥(はしゃ)ぎまくっている。

それなら、前政権であった胡錦涛時代の座談会ではどうだったのかを見てみよう。

たとえば2007年2月14日に当時の胡錦濤国家主席が主催した「党外人士迎春座談会」には当時の温家宝国務院総理(首相)は出席していないが、当時の他の中共中央政治局常務委員の一部だけが出席している。

また、2011年1月31日に胡錦涛が主催した「迎春座談会」にも温家宝は出席しておらず、中共中央政治局常務委員の一部だけが出席している。ついでに申し上げるなら当時国家副主席だった習近平や国務院副総理だった李克強さえ出席しているというのに、国務院総理である温家宝は出生していないのである。

両方とも、今年7月21日に習近平が開催した企業家座談会と同じ構成だ。

すなわち、オシドリ夫婦のような「胡錦涛―温家宝」ペアでも、「党外人士」のような、つまり「党員幹部」だけの集まりではないような座談会を国家主席が主催する場合は、一般に国務院総理は出席しないのである。

これは中国建国以来の中国政治の習わしだからだ。

権力闘争論者は、胡錦涛政権の事例を以て「権力闘争だ」と主張できるだろうか?

できないはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中