最新記事

アメリカ経済

長引くNYオフィス不況 コロナショックは不動産投資も直撃

2020年9月15日(火)11時08分

ニューヨークがオフィススペースの過剰に直面している。新型コロナウイルス感染症への懸念のため、オフィスビルの日々の利用がほとんどゼロになっているためだ。写真はマンハッタンの夜景。6月7日撮影(2020年 ロイター/Eduardo Munoz)

ニューヨークがオフィススペースの過剰に直面している。新型コロナウイルス感染症への懸念のため、オフィスビルの日々の利用がほとんどゼロになっているためだ。コロナ禍によって米大都市の中でも最も高い失業率にあえいでいるニューヨーク市にとって、壊滅的な兆候だ。

マンハッタンの過密さと林立する高層ビル群が、オフィスへの人々の回帰を妨げている。新型コロナのワクチンが開発され、地下鉄やオフィスビルのエレベーターが人々が十分に戻って来るまで、こうした状況は続く可能性が高い。

企業経営者約300人が参加するNPOのパートナーシップ・フォー・ニューヨークシティーが市内の大手企業の経営者を調査したところ、8月半ば時点でマンハッタンのオフィスに戻った従業員は全体の8%にとどまった。復帰が最も進んでいるのは不動産業で、従業員の53%が戻っていた。

転貸は2010年以来の高水準に

不動産仲介コリアーズ・インターナショナル・グループのマイケル・コーエン社長は「経済の現状は人々の健康への考え方と足並みがそろっている」と語る。人々がオフィスに戻っても十分安全だと思うまで、よほどのことが起きない限り、厳しい経済状態が続きそうで、これでは業況回復につながりそうにないという。

不動産契約のうち、転貸と契約の短期更新を合わせた割合が全体の70%以上に増えている。テレワーク化が成功したことで、企業経営者が自社の不動産ニーズに確信を持てていないことが分かる。

コリアーズによると、マンハッタン内の3市場のうち2市場で、転貸はオフィススペース全体の25%を超えている。供給が需要を上回っている状態だ。転貸はマンハッタン全体でも23%と、2010年以来の高水準という。

マンハッタンの平均希望家賃は今年第1・四半期に上昇が続き、過去最高を記録していたが、それに比べて8月は1平方フィート当たり2.03ドル(約215.5円)下がって78.01ドルになった。

転貸増加と家賃下落圧力の兆候が過去の景気後退局面に比べて比較的遅くに表面化したのは、7月下旬になるまで不動産仲介業者が顧客にオフィススペースを見せるのを制限されていたためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン「無条件降伏」要求 最高指導者「

ワールド

習主席、中央アジア5カ国との条約に署名 貿易・エネ

ワールド

米軍、中東に戦闘機追加配備 イスラエル・イラン衝突

ビジネス

米5月の製造業生産、前月比0.1%上昇 関税影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中