最新記事

インド

世界の脱中国の波にのって、インドが「世界の工場」を目指している

2020年5月29日(金)18時30分
松岡由希子

製造業振興策「メイク・イン・インディア」を強化 CNBC-YouTube

<新型コロナウイルス感染拡大によって、世界各国は、サプライチェーンの再考を迫られているが、インドが製造業振興策を強化している......>

中国は、2000年代以降、「世界の工場」の地位を確立し、サプライチェーンの生産拠点として重要な役割を担ってきた。しかしながら、2018年から続く米中貿易摩擦に加え、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染拡大によって、世界各国は、サプライチェーンの再考をますます迫られている。

2月には、中国の製造業の景況感を測る「中国製造業購買担当者景気指数(PMI)」が35.7となり、好不況の目安とされる50を大きく下回って過去最悪を記録した。2020年第一四半期の実質経済成長率も対前年同期比6.8%減と大幅に落ち込んでいる。

製造業振興策「メイク・イン・インディア」を強化

新型コロナウイルスの感染者数が11万人を超えたインドは、3月24日から全土で都市封鎖(ロックダウン)を継続する一方で、5月12日、インドの国内総生産(GDP)の10%に相当する20兆ルピー(約28兆円)規模の新たな経済対策を発表した。

財政面の支援にとどまらず、税制改正や規制緩和によって企業活動を後押しし、投資を呼び込み、モディ政権下で2014年から推進してきた製造業振興策「メイク・イン・インディア」を強化して、低迷する国内経済の回復を目指す。

ナレンドラ・モディ首相は、インド国内で1日20万枚の医療用N95マスクが生産されていることを例に挙げて、現在の危機を新たな機会に変えるよう国民に説くとともに、各地域の製造業やサプライチェーンを改めて重視し、「今こそ、インドの各地域で製造される商品を世界に広めるときだ」と強い意欲を示している。

PM Modi's address to the Nation on COVID-19 | 12th May 2020 | PMO


インド紙「ビジネス・スタンダード」によると、インドの電子機器製造業の規模は2018年時点で4兆5800億ルピー(約6兆4120億円)で、世界全体の3.3%にとどまっている。

インド政府は、2019年2月に承認された「国家電子産業政策(NPE2019)」において、電子機器の売上高を2025年までに4000億ドル(約42兆9800億円)にまで拡大させることを目標に掲げている。

電子機器製造に関する新たなインセンティブプログラムを発表

2020年4月には、電子情報技術省(MeitY)が、インドでの電子機器製造に関する新たなインセンティブプログラムを発表。そのうちのひとつ「生産連動型優遇策(PLI)」では、総額4100億ルピー(約5740億円)を投じ、メーカーに対して、2020年8月1日から5年間、インドで製造された製品の売上高の増加分の4〜6%を補助金として支払う。国外のメーカーを積極的に呼び込むことで、国内のインフラやサプライチェーン、物流の整備など、インドの製造業が抱える課題の解消にもつながると期待を寄せている。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴って、中国に依存した既存のサプライチェーンは、今後、大きく様変わりしていくかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

原油先物が小幅安、市場は対ロ制裁や関税を引き続き注

ワールド

米、メキシコ産トマトの大半に約17%関税 合意離脱

ワールド

米、輸入ドローン・ポリシリコン巡る安保調査開始=商

ワールド

事故調査まだ終わらずとエアインディアCEO、報告書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中