「人命と経済」、米国が直面する新型コロナウイルス対策の難問
量りにかけるのは間違い
死者数と経済をてんびんに掛けるという考え方には、根本的な欠陥があると、多くのエコノミストが声を上げ始めている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者、エミル・バーナー氏は、科学的根拠を踏まえると「ある意味で間違ったトレードオフだ」と指摘する。
バーナー氏は前週、1918年に起こったスペイン風邪の世界的流行への対応に関する論文を共著で発表。それによると、なるべく早い段階で、なるべく長期間にわたって集会を制限した都市ほど死者が少なく、最終的に立ち直った時には経済が力強く成長した。
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長など、現職や元職の政策当局者とエコノミスト30人以上も今週、「この機において、人命を救うことと経済を救うことは相反にはならない」とする共同声明を出した。
保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のディレクター、ポール・ウィンフリー氏も、拙速に制限措置を緩めると打撃を招きかねないと言う。
ただ、恐慌になるまで経済の悪化を放置すると、結局は健康にも悪影響が及ぶだろうと話した。
「ホワイトハウスは、新型コロナおよび制限緩和による長期的、短期的な健康問題への影響を分析し始めている。経済界からの聞き取りを進めており、ある程度の確実性を示してほしいとの声が届いている」という。
(Ann Saphir記者 Jeff Mason記者)