最新記事

貿易戦争

2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた

Trump Turns Global Trade Upside Down

2019年12月27日(金)19時00分
キース・ジョンソン

1.貿易戦争に勝つためにロバート・ライトハイザー通商代表を起用したが、結局負けた
8月2日、エドワード・オルデン(米外交評議会上級研究員)

ロバート・ライトハイザー米通商代表は懲罰的な関税や一方的な行動を好み、世界の貿易システムに批判的な傾向がある。古い法律を引き合いに出して高額な関税を導入し、ほかの国々を脅して譲歩を強いるというのが彼の基本的なやり方だ。これがメキシコとカナダ相手にある程度功を奏してNAFTAに代わる新協定の合意に至った。だがこの「最大限の圧力」作戦は、中国とヨーロッパ相手の貿易戦争においてはほとんど成果をもたらしておらず、今後もその状況が変わるとは思えない。

「トランプの貿易政策を支えてきた理論のすべてが間違いだったことは明らかだ」とオルデンは書いている。「その理論はゾンビのように生き続けるかもしれないが、今ある最小限の成果は今後、ますます縮小していくだろう」

2.見せかけだけの合意
10月14日、クリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)

トランプが展開している貿易戦争の中でも最大の戦いである中国との貿易戦争は激しさを増す一方で、2019年後半時点でもまだ続いている。たとえ何らかの譲歩をしたとしても、トランプは来年の大統領選に向けて再び関税引き上げを行う可能性もある。だが細かな条件がどう変わろうと、中国との合意はトランプ政権が当初目指していたようなもの――、即ち政府による産業補助や知的財産権の侵害、為替操作などアメリカが不満をもつ不公正慣行すべてを正すものにはならないだろう。

「さらに大きな問題は、アメリカと中国の意見が一致する問題がほとんど何もないことだ」とバルディングは書く。「問題が何なのか、それをどう解決するのか、大まかな目標が何なのかについてさえ、意見が一致していない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中