最新記事

米中関係

トランプが香港デモの支援法案に署名すれば、米中貿易戦争はさらにエスカレートする

Trump May Sign Hong Kong Pro-Democracy Bill, Despite Chinese Opposition Potentially Derailing Trade Talks

2019年11月22日(金)13時50分
パラシュ・ゴシュ

香港デモへの対応をめぐって米中の亀裂はさらに深まっている Thomas Peter-REUTERS

<米議会上下両院が法案を可決した今、米中が来月の追加関税に踏み切る可能性は高まった>

米議会の上下両院が、香港の民主化運動を支援する法案「香港人権・民主主義法案」を可決したことで、米中が貿易協議でめざしている「第1段階の合意」の見通しに暗雲が立ち込めている。

この法案はすでにドナルド・トランプ米大統領に提出され、あとはトランプが署名すれば成立する段階になっている。

米議会の法案可決に対して、中国外交部の耿爽(グン・シュアン)報道官は非難声明を出し、法案が成立すれば中国は「強い報復措置」を取ると警告した。

さらに耿爽は21日、「中国が国家主権と国益を守る決意を、何者も過小評価するべきではない」と強い口調で非難した。

さらなる追加関税が現実的に

香港特別行政区政府もまた、米議会の法案可決に反発した。「法案は不要であり不当である。さらに香港とアメリカの関係と共通の利益に損害を及ぼす」。

IMF(国際通貨基金)の中国部門トップを務めた米コーネル大学のエスワー・プラサド教授は、今回の法案によって米中が新たな貿易協定を結ぶ機会が台無しにされる可能性があると言う。「アメリカが中国国内の経済、政治問題に関して中国の主権を侵害しようとしているという言説が中国国内の国政担当者の間でさらに強くなる」と見ている。

中国は協議の中で、「第1段階の合意」の前提としてアメリカに対して関税の一部を撤回するよう求めている。一方トランプ政権は、合意に至らなければさらに追加関税を課すと脅かしている。米中双方の追加関税は12月15日に予定されている。

投資企業「ベダ・パートナーズ」の経済政策担当ヘンリエッタ・トレイズは、この法案によって12月の追加関税の可能性が高くなったと見ている。「米中間の緊張は収まらず、むしろ高まっている。米中協議は合意に至らず、対立はさらにエスカレートするという見方が現実的だ」と話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付

ワールド

情報BOX:米国防権限法成立へ、ウクライナ支援や中

ビジネス

アングル:米レポ市場、年末の資金調達不安が後退 F
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中