最新記事

アメリカ政治

「トランプの対ウクライナ圧力に懸念」ホワイトハウス当局者が初の議会証言

2019年10月30日(水)10時36分

米ホワイトハウスの国家安全保障会議メンバーであるアレクサンダー・ビンドマン陸軍中佐が29日、ウクライナ疑惑を巡るトランプ大統領の弾劾調査を進める下院の3委員会で証言した(2019年 ロイター/SIPHIWE SIBEKO)

米ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)メンバーであるアレクサンダー・ビンドマン陸軍中佐が29日、ウクライナ疑惑を巡るトランプ大統領の弾劾調査を進める下院の3委員会で証言した。

NSCで欧州問題責任者を務めるビンドマン氏は、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に政敵のバイデン前副大統領の調査を求めたことに懸念を抱き、ホワイトハウスの弁護士に国家安全保障の観点から問題を報告したと明かした。

ホワイトハウス当局者がトランプ氏の弾劾調査で証言したのは初めて。また、7月25日に行われたトランプ氏とゼレンスキー氏の電話会談を聞いた当局者が証言したのも初めてとなった。

ビンドマン氏は冒頭の声明で「電話に懸念を覚えた」と述べた上で、「外国政府に米市民の調査を求めることが適切とは思わなかった。米政府のウクライナ支援に関する暗示について懸念した」と語った。

また「ウクライナがバイデン氏と(息子のハンター氏が幹部を務めた同国のガス会社)ブリスマへの調査に入れば、これまでの与野党を超えたウクライナ支援が間違いなく終わる党派的な行為と受け止められると認識した。これは米国の安保を弱体化させる」と話した。

ビンドマン氏は電話会談後、NSCの主任弁護士に懸念を報告。電話会談の内容はその後、内部関係者による告発を経て弾劾調査の開始につながったが、ビンドマン氏は自身がその内部告発者であることは否定した。

ソンドランド駐欧州連合(EU)大使が今月17日に行った証言内容の真偽にも疑問を投げかけた。

ビンドマン氏によると、7月10日にワシントンで行われたウクライナ当局者との会議で、ソンドランド大使はウクライナ側に「(トランプ)大統領との会談を取りつけるためには特定の調査を実行」する必要があると伝えた。その時点で、当時大統領補佐官(国家安全保障担当)だったジョン・ボルトン氏が会議を打ち切ったという。

ビンドマン氏によると、ソンドランド大使はその後、他の米当局者に会議の報告をした際、ウクライナによる調査が2016年米大統領選とバイデン親子およびブリスマを焦点とすることが重要だと述べたという。

ビンドマン氏は「私はソンドランド大使に、同氏の発言は不適切であり、バイデン親子の調査要請は国家安全保障とは全く無関係だと指摘した」と証言した。

関係筋によると、NSCの元欧州・ロシア担当首席顧問、フィオナ・ヒル氏も今月14日の証言で、ソンドランド大使が7月10日の会議でバイデン親子の調査に言及したことに懸念を抱いたと述べた。

ソンドランド大使は自身の証言でこの会議について、「われわれが行っていたことの適切さを巡りボルトン氏やヒル氏、その他関係者が懸念を抱いていたとすれば、彼らはその場でもその後にも、そうした懸念を私に伝えなかった」と述べ、食い違う説明をしている。

*内容を追加しました。

[ワシントン 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PPI、1月前年比3.5%上昇 予想上回る

ワールド

米ロ首脳、再び電話協議の可能性 直接会談前に=ロシ

ワールド

ウクライナ抜きの和平合意「受け入れられず」、ゼレン

ワールド

独ミュンヘンで車突っ込み28人負傷、アフガン人運転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?
  • 4
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 5
    夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関…
  • 6
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 7
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    駆逐艦から高出力レーザー兵器「ヘリオス」発射...ド…
  • 10
    便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明され…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 7
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 8
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 9
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 10
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中